環境技術学会・NPO環境技術支援センター 共催行事
環境サロン【安威川ダム工事現場の見学】 報告
               本庄孝子  2014年5月17日 

 NPO環境技術支援センターでは、5月17日、茨木市に建設中の安威川ダム工事の現場を見学した。茨木駅から車で20分ほどの都市のすぐ近くのダムである。
 安威川ダムはS42年の北摂豪雨により、安威川流域において死傷者61名、浸水家屋約2万5千戸等の被害を受けたことを契機に計画され今日に至る。100年に1回の大雨に対応するよう、河川改修とダムによる治水方法を選択しており、箕面ダム、狭山ダムに続いて、大阪府が治水対策のために作る最後のダムと言われている。中央コア型ロックフィルダムで(遮水壁であるコアは粘土層)、堤高は76.5m、全体事業費は約1,314億円である。
 ダム湖に沈む集落の移転を終え、現在は、安威川を堰き止めダム本体を建設するため、バイパス水路(転流工)を作っている。水路は直径約7m(内側をコンクリートでコーティング)で、その吐出し口工事を見学した。
1. 転流工 吐口部

 ダムへ向かう通称ダンプ道は、高度成長期には上流の採石場から大阪近辺各地の建設現場へ向かうダンプの流れが絶えなかったが、現在の交通量は一時の半分位になっているそうだ。
 当初、このダム堤体を構成するロック材も自前で調達する予定だったが、そこへ行くまでの工事用道路を造ること、また、その予定地にオオサンショウウオ(下音羽川)が生息していることが判明したことなど、費用と環境の点から、自前調達をあきらめ、民間の採石場から調達することになった。コアの粘土は自前調達だそうだ。
 安威川ダム周辺には4,000種以上の動植物が確認されている。大阪府はダム建設による環境への影響を可能な限り小さくするために「安威川ダム自然環境保全マスタープラン」に基づき、動植物、水質・流量観測調査と環境保全対策に取り組んでいるという。ダム事務所は、オオサンショウウオ、アジメドジョウ、ムギツク、鳥のヤマセミ、草のオグルマなどを保全するが、これからのダム地区再生についての適切なアドバイスがほしいとのことである。
 この地区は物流拠点の予定地でもある。彩都の東端に接し、ダム工事と同時に並行してすぐ北側で新名神高速道路の工事が進んでいる。また、かつてモノレールもここまで来ることになっていた。一帯は丘陵地帯で明るく開けている。広葉樹林地帯で、往時、炭作りが盛んで、杉や檜の植林はあまりなされなかった。
 生保集落の移転先と、車作集落の移転先を見学した。この地名はかつて天智天皇に御所車を造って献上したことに由来すると言われているそうだ。道路の付け替え工事もかなり進んでおり、高い位置に橋が架けられている。

2.生保地区代替地上部より大岩のコア山、車作地区を望む

 ダムの北側には新名神の工事現場がある。両側が谷になった尾根筋現場から展望すると、北側に採石場跡地が開け、ここにトンネルが作られる予定で、そこに向けて橋を建設中である。南からの展望では、橋脚の足場が印象的である。割り箸を組み込んだような鉄細工が絵になる。こちら側には、上りと下りのトンネルの入り口が見えた。
 歴史的な建造物としては、車作集落の深山水路(権内水路)を見学した。安威川はこの地域よりも下を流れていたためここには江戸時代中期まで水田がなく、庄屋の畑中権内は独力で上流の下音羽川から高低差3mのところを2.2km開削して水路を完成させ、現在も農業用水として利用されているという。当時は、高低を測る測量器はなく、夜に提灯をずうっと配置し、「提灯測量」で水路を決めたそうだ。
3.権内水路

 続いて、府立春日丘高校分校跡地の茨木市里山センターを見学した。この近辺の4つのNPOの活動拠点で地域に伝わる工芸を活動の柱とする。立命館大学と一緒に地域の植生による苗木の栽培をしている。どれもダム建設後の地域づくりを考えながらの模索である。
他の例に漏れずこの地にも高齢化と過疎化の波が迫っている。残土処分地として地元住民から借り、圃場整備して返す10年後の農地の後継者は育つのか?大勢の人に安威川ダムのファンになってもらって、地域づくりに係わって貰うにはどうしたらいいか?足を運んで貰い、地域で活動して貰うには?と、ダム事務所では考えているそうだ。
見学者から「工事中からダムカードを発行してはどうか?」「ダムをカードは見学すると貰えるけれど、ダムができる前ならプレミアムカードが貰える!」とアドバイスがあった。これはコレクター向きのアイデアだが、事務所は、ダムが完成した後の生活圏としての地域作りに係わる人が育つようなプログラムはないかと考えている。下村良希ダム事務所所長は、まずは、より多くの人に足を運んで見て知って貰いたいとくり返していた。
 最後に、安威川ダム建設事務所にある、見事な大型模型にレイヤーをかぶせながら、事業の進捗状況をご説明いただいた。迫力ある模型で、見学内容を俯瞰するように確認できた。2020年の完成を目指して工事が進む安威川ダムの総合的な取り組みがよく理解できた。参加者を先導し詳細な説明をいただいた下村良希事務所長、企画グループの松原信様に改めて御礼を申し上げる。
4.安威川ダム建設事務所・・模型説明

参考)安威川ダム建設事務所http://www.pref.osaka.lg.jp/aigawa/
環境技術学会 http://www.jriet.net/ kankyo-g@jriet.net(@を半角にしてメールをお送り下さい)
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