■特集にあたって(2004年4月号)
特集1・リスクコミュニケーションと環境保全に係わる社会問題
福永 勲(大阪人間科学大学/本誌編集委員)
今日リスクという言葉が社会で普通に通用し、いろんなケースに使われている。
我が国では、人々の近年の交通事故死が1年に1万人に近いことから、そのリスクは1年に1万人に一人
に近いとも言われる。また、化学物質などによる人々の健康への影響もリスクゼロはありえない、しかし、
いかにリスクを小さくし、健康に長生き出来るようにするかというようになってきた。
そして、その理由や仕組みに関わる情報が国民一人ひとりに伝達・理解され、納得してこそその対策効
果も上がるといわれるようになってきた。それが、まさにリスクコミュニケーションである。
その時宜に適した話題を「リスクコミュニケーションと環境保全に関わる社会問題」と題して都市域環境問
題研究会(会長:村岡浩爾大阪産業大学教授)でのイブニングセミナーで取り上げられたのを機会に、本誌
でも特集としてご執筆をお願いした。
その今日的意義を「今日なぜリスクコミュニケーションをとりあげたか」として、村岡会長に改めて明らかにし
ていただいた。そして、まず、はじめに法学者である磯村大阪教育大学教授に法理論的な意義と背景を述
べていただいた。技術誌である本誌読者には、お目にかかることの少ない法学者の興味のある論理展開
をしていただけたものと思っている。
つぎに、兵庫県の菊井順一氏には、行政が実際にPRTR制度を通じてリスクコミュニケーションをどのよう
に実践しているかを紹介していただいている。また、日本ペイント鰍フ臼倉文雄氏には、企業の立場で企業
の抱かえる環境問題をリスクコミュニケーションの実践を事例として紹介していただいた。最後には、各種の
化学物質に関わる事件を解決してこられた事例を、NGOの立場で環境監視研究所の中地重晴氏に述べて
いただいた。これらは、実践事例としてなかなかのものである。
以上、本特集は、理論に終わらずに具体的な実践事例を紹介していただいており、読者には興味をもって
お読みいただけるものと感じている。
■特集にあたって(2004年4月号)
特集2・鉄バクテリア法等による高効率生物処理
金子光美(立命館大学客員教授/本誌編集委員)
本特集は、昨年本学会が行った鉄バクテリア等による高効率生物処理法に関するセミナーの内容をもとに
したものである。その内容は二つの側面をもつ。
一つは鉄をバクテリアの酸化能力を利用して除去すること、もう一つは微生物を利用した高速ろ過の浄水技
術の開発である。小規模水道では地下水を取水しているところが多い。地下水は冷たくておいしくかつ安全と
いうイメージ強いが、実際はトリクロロエチレンのような有機溶剤、農薬あるいは亜硝酸性‐硝酸性窒素に汚染
されているケースが多い。また人為的汚染がない場合でも鉄、マンガンによる赤い水、黒い水に悩まされるケ
ースはいまもって多い。
一方で、地下水を利用するのは、くみ上げてそのまま使えるということからわかるように、コストが安くかつ高
度な技術を必要としないという利点を生かすことにある。だから小規模水道に地下水が用いられる。この利点
をできるだけ生かして、赤水や有機汚染に対処しようというのが、本特集で取り上げた技術である。緩速ろ過
のように生物を利用した技術が広く採用されていた時代があるが、急速ろ過が主流を閉めてくると、浄水技術
に生物を利用する考えが希薄になってきた。最近では前処理に生物作用を利用する場合もあるが、環境にや
さしい技術として生物を利用する技術は、上水道においてももっと採用されることが望ましい。
溶存鉄が鉄バクテリアによって酸化されて赤い水になるなら、その作用を利用して鉄を除去しようとする試み
は古くからあり、実際に取り入れたところもある。しかし以前の方法はろ過速度が遅いのが欠点の一つに挙げ
られる。
本特集ではろ過速度を高めるとともにその他の物質も除去する技術の進歩を示すものである。この高
速の生物処理技術は単に地下水に適用されるだけでなく、懸濁物質に対する対応を考慮しながら表流水にも
適用可能のはずである。また、鉄バクテリアの生活の動態や鉄酸化のメカニズムなど未だ完全にわかってい
ない.その点についても示唆されるところがある論文が紹介されている。これらの研究成果からさらに生物利用
技術が進展する事を期待したい。