近 木 川
水質ワースト1を克服した環境教育のメッカ |
1.プロファイル
近木川は大阪南部の葛城山(標高858m)西麓を源とし、和泉丘陵の外通谷を通り約3km下流の蕎原の嘉垣外橋から近木川(流路延長15.45km)として流下し、下流から約7.5kmの水間(標高200m)で秬谷(きび)川を合わせて大阪湾の二色の浜北側に流入する流域面積27.33km2、源流から河口まで貝塚市域(99.93%)を流れる2級河川である。
近木川は源流部には西日本でも数少ないブナの原生林があり、純林の分布として南限圏にあたることから学術的に貴重なもので、1923年(大正12年)に国の天然記念物に指定された。ブナ林で国指定天燃物になっているのは全国で3ヵ所(ほかに、北海道黒松内、広島県比婆山)である。上流部は掘り込み河道で河床には露岩が散見し、随所に瀬、淵が形成されている、一方下流部には河畔林等の貴重な自然が残されている。
さらに河口部は大阪湾でも数少ない干潟が見られ源流から河口まで流域全体が自然・環境教育のフィールドとしてのスポットが随所にあり、環境教育のメッカの呼称に相応しい河川である。
2.近木っ子会議と近木川再生運動
近木川はかつて(1993年度、1997年度)「2級河川水質全国ワースト1」と呼ばれるほど水質が悪化した時期があった。これをバネに様々な市民活動が始まった。その中から「近木っ子探検隊」という生物調査やボート遊びの活動が生まれ、さらに1996年には学校の先生、市民、専門家、そして行政が共同して「近木っ子会議」を結成し川の環境改善活動を始めた。その後トンボサミットや近木川フォーラム等の様々な環境教育の取り組みがなされてきた。現在、流域全体で川と親しむための「近木川流域自然大学」構想(山の分校、川の分校、海の分校)が貝塚市の施策計画の中に位置づけられた。
3.近木川点描
1)蕎原(そぶら)大橋
水鉄バスの終点蕎原の2つ手前蕎原口で下車すると、目の前が2級河川近木川の管理区間の最上端に近い蕎原大橋である。(写真1)。ここから上流は葛城山頂まではハイキングコースになっている。周辺は牧歌的な里山の佇まいを見せている。河床はきれいな砂地で水深はさほど深くなく多くの水生生物が観察されている。子供の川遊びが出来るスポットが随所にある。自然遊学館の資料によれば、上流ではムカシトンボ、ヘビトンボ、ゲンジボタルを含む多様な水生昆虫群集が維持され、カワムツなどの魚やカジカガエル、タゴガエル、ブチサンショウウオなどの両生類や、市街地や丘陵地で見られない鳥類・哺乳類が生息しており、モクズガニのように生活史の中で下流から上流、上流から下流へと移動する種も生息しているそうである。
http://www.city.kaizuka.osaka.jp/shizen/nature-in-kaizuka.htm
水は近木川下流の水からは想像もできないほどきれいに澄んでいる。支流の秬谷川の上流部は蛍の生息地として知られている。
2)ほの字の里
蕎原口のバス停から徒歩5分のところに地元の地域の村落協同組合の運営する施設「ほの字の里」http://www.honojinosato.com/がある。研修室や木工設備を始め様々な体験用具を揃え炭焼き体験、田植え稲刈り体験が出来る。また、天然温泉の出る宿泊施設もありここをベースに源流域の探索や自然学習が出来る。近木川流域自然大学山の分校として位置づけられている。
3)落合橋から水間大橋
蕎原大橋から落ち合い橋、奥水間を経て水間大橋までの途中約7kmは、山付きで河畔林が豊富な自然を満喫出来る。落合橋にはかつて水車小屋があった。
近木川が支流の秬谷川と合流する一帯は川と川の間の島のような地域で、水間と呼ばれている。
有名な水間寺(水間観音)が丁度合流地点に座している。水間寺は、天台宗の別格本山で聖観世音菩薩を本尊とする。天平年間(729−749)に、聖武天皇の勅願によって、僧の行基が創建したといわれるが、異説もある。
水間から下流は落差は平坦になるが、この一帯は河岸が岩石で美しい渓谷美を醸しており、秬谷川には有名な滝がある。右岸側には近木川水間井堰がありため池への分水路が流れている。(写真2)泉州地域はため池の多い地域である。近木川の水はため池に分水され、その水はため池間のネットワークで結ばれ使いまわしされてまた近木川に戻り無駄なく使われてきた。
ため池への分水路は周辺の集落を流れ、民家の玄関先には洗い場の階段が作られている。水間井堰の起源は水間観音と同じく僧行基による構築と言い伝えられている。また、水間観音の下手には同じく僧行基構築の永寿井堰がある。永寿池から主に南近木地区への水系へとつながりこの二大水系が貝塚市の農業用水を支えてきたとされている。
5)平成大橋〜福永橋(積善橋)
河口から約3kmの積善橋(又はすぐ上流側の福永橋)の上下約1kmは石積護岸で河畔林が生茂り、河床には所々に寄り州が形成され都市河川には珍しく下流域に貴重な自然が多く残されている他に見られない特徴を持っている区域である。(写真3)河床の一部は粘土質で環境教育の一環として焼き物教室も計画されている河岸が、地元では長谷川の疳医者と呼ばれ親しまれていた方の土地であったこともあり自然が残されたとも考えられる。
平成大橋の上流側の河川敷に近木川流域自然大学川の分校が計画されている。小学生の利用を中心に考え簡単なトイレ、手洗い施設、雨よけ施設などが計画されている。
学校の先生、ボランティア、地域住民による環境教育やコミュニティー活動が出来るような公園的な一帯になればと期待されている。また、「子供の川守り隊」のような活動も計画されている。
6) 自然遊学館と環境保全活動
近木川は二色浜公園の北端で大阪湾に流入する。河口には干潮時には自然の干潟が形成され、カニ類が生息し、さまざまな留鳥、夏鳥、冬鳥が餌場として利用している。
また、近木川河口周辺で60種以上の貝類が確認されているそうだ。この河口を広げ汽水域ワンドを作る目的で1998年に地元自治連合会、近木川の保全活動グループ、自然遊学館のスタッフ等で「近木川河口に汽水域ワンドを作る会」を発足させ、大阪府に「汽水域ワンド」(河口を広げ干潟を作ることによって水質改善、地域の自然の保全と再生を図り人々が生き物に触れ合える場を実現する)計画を提案し、2003年度に大阪府の事業として実現した。自然遊学館は近木川流域自然大学海の分校として位置づけられており、ビオトープも年々成長しておりトンボサミット開催の事務局をスタッフが担当した。
http://www.city.kaizuka.osaka.jp/shizen/index.htm
7)アクセス
自然遊学館へは南海本線貝塚下車、水鉄バス市民の森から徒歩3分。福永橋、積善(しゃくぜん)橋へは水間鉄道清児(せちご)駅下車5分。水間寺へは水間鉄道終点水間駅下車徒歩15分。
上流の蕎原へは水間駅前から水鉄バス蕎原行きで蕎原口下車。(バスの回数は少ないので事前に確認の要あり。時刻表はhttp://www.suitetsu.com/参照)。ほの字の里へは蕎原口から徒歩5分。蕎原大橋から近木川沿いに途中で落合橋、奥水間を経て水間までは約7km。
貝塚駅の西側一帯は願泉寺を中心とした環濠城塞都市の面影を残す寺内町である。
(謝辞)
本稿の執筆に当たって、元貝塚市理事(現自然遊学館嘱託)の橋本夏次様、並びに
自然遊学館の白木江都子先生に大変お世話になりました。厚く御礼申し上げます。
土永恒弥(タツタ環境分析センター)