「環境技術」 2004年8月号:特集のねらい

                電解法を用いる新しい排水処理
                           尾崎 博明(編集委員/大阪産業大学)


 電解法は電極を用いる酸化、還元反応を利用する方法であり、水処理分野においても従来から、重金属イオンの還元や電解により生成させた次亜塩素酸による有機物分解などに適用されてきた。しかしながら実際には、電極材料の劣化、電気利用効率や処理効率の限界などの問題があり、排水処理に適用するための基礎研究や応用が進展しない時期があった。最近になり、材料開発の急速な進歩とともに、電解法に関する研究、応用もまた新たに展開され始めた。なかでも本特集でもとりあげた、電解法による窒素除去(アンモニア性窒素の酸化と硝酸性窒素の電解脱窒による同時除去)や内分泌撹乱物質(環境ホルモン)の電解酸化は注目に値する。電解法を改めて見直そうということが本特集のねらいである。

 排水中の窒素除去法としては各種あるが、最終的には脱窒により窒素ガスとして処理する方法が望ましい。これを満足する方法として生物学的硝化・脱窒法が一般的によく用いられるものの、脱窒のため水素供与体(メタノール等)が必要であり、また、生成汚泥の処理が近年の重要な問題である。物理化学方法も膜分離法やストリッピング法にみられるように必ずしも窒素ガスへと変換できない。従来の電解法も、生成させた次亜塩素酸をアンモニアと反応させる電解法がよく知られているが、通常は硝酸性窒素の残存がみられる。

 今日、電極の改良やたくみな反応槽構成による生成次亜塩素酸と塩化物イオンの有効利用とにより、希薄な塩化物イオン溶液中でのアンモニア性窒素と硝酸性窒素の同時除去が可能となった。また、低濃度電解質溶液に適用できる電解槽も開発された。電解法は通常、低濃度電解質中ではエネルギー損失が大きくなるため不利である。新しい電解槽はこれを克服し、低濃度の有機物質(環境ホルモン)をオゾン法以上のエネルギー効率で直接酸化するにいたっている。

 電解法は原理的にはそれほど複雑ではないため、上記のような微量有害有機物を対象として他の物理化学方法との併用処理も進められている。一般的な促進酸化法などとの併用による分解能力の増強はごく自然な方向であろうし、超音波法との併用なども新しい方法として模索されている。電極材料がかなり改良された現在、電流効率が最重要課題とするならば、電力消費が削減できる強力な触媒酸化との併用も実際的である。

 電解凝集を利用した排水処理もまた新たな展開をみせている。よく知られている鉄電解では生成した鉄イオンが凝集剤となり、リンが存在する場合はリン酸鉄が生じる。このことは上述のような窒素除去をうまく組合せれば窒素とリンの同時除去が可能であることを示している。生成したリン酸鉄や凝集した水酸化鉄(有機物含有)を重力沈殿により分離することには困難をともなう場合も多いが、現在では、たとえ粒子が微細で磁化が小さくとも強力な磁気分離により容易に分離することが可能である。電解、電解凝集、磁気分離を組合せた排水処理は埋立地排水のような総合排水に適用されうる段階に達している。

 本特集では、電解法による微量有害有機物の直接酸化や触媒併用による分解、アンモニア性窒素と硝酸性窒素の同時除去さらには窒素とリンの同時除去、電解凝集や磁気分離を組合せた排水処理等を取上げ、新たな展開をみせている電解法の現状、今後の展望と課題を紹介していただいた。従来技術を基礎にしながらも極めて新しい内容を含んでいるため今後の課題となることも多々あるが、十分に応用を意識した内容となっていることから、水処理に関わる多くの方々の参考になることを願っている。最後にご執筆いただいた方々に深謝申し上げたい。

8月号