家庭用小型浄化槽の最近の技術動向

               特集のねらい  龍谷大学理工学部環境ソリューション工学科     竺 文彦

 
  これまで浄化槽はし尿を処理する設備として発達してきたが、平成12年にし尿のみを処理する単独浄化槽が禁止され、雑排水も含めた家庭排水すべてを処理する合併処理浄化槽のみとなり、下水道と同様に環境水域の水質を保全するための施設として位置づけられるようになってきた。さらに合併処理浄化槽においては、近年、膜分離技術を利用した浄化槽、リン・窒素を除去するための浄化槽、ディスポーザーの使用に耐えうるような浄化槽など、さまざまな技術開発が行われてきており、さらに小容量の浄化槽の開発が進んでいる。そこで、ここでは家庭用小型(合併処理)浄化槽の最近の技術動向について特集を組み、その状況について報告する。
 
  浄化槽は、各家庭用の数人規模のものから集合住宅や団地など数千人規模のものまでその大きさは様々であるが、数千人規模のものはむしろ小規模の下水道に類するものであり、浄化槽としての特徴的なものとしては、各家庭用の小型合併処理浄化槽である。
 
  家庭用の小型合併処理浄化槽の処理方法としては、下水道で用いられている活性汚泥法とは異なった接触ばっ気法が主に用いられている。接触ばっ気法は、生物膜法の一種でプラスチックの担体に微生物を付着させて処理を行うものであり、この技術は小型浄化槽によって発達してきたと言っても過言ではない。また、有機物を分解したり、窒素の処理を行うために、嫌気性接触ろ床法も開発された。
  
  これまで浄化槽は下水道の補完施設として位置づけられ、下水道が建設されれば廃棄されてきたが、性能の優れた小型合併処理浄化槽は十分に下水道と同等の処理性能を有し環境保全の役割を果たすため、下水道に代わる施設として、浄化槽によって地域的整備を行うところも出てきている。
  
  下水道は都市部の基幹設備として欠くことができないが、下水道を建設すると地上部から水が消えて、潤いが無くなり、水性生物の棲み家も無くなることになる。また、現在、琵琶湖において問題になっているCODの上昇は、水と土の接触が無くなっていることがその原因ではないかと推測されており、下水道が普及するにしたがいこれらの課題の解決が求められてきている。この点、浄化槽の場合には、地域に分散したオンサイトの施設であり、地域の水路・小川に水を返すために、豊かな水環境を維持することが可能であり、微量な水質の改善の効果も期待できる。

  さらに、財政的には、下水道は管渠を埋設する膨大な経費が必要であり、これを税金で賄っている。起債によって建設してきた下水道の費用は、今後、小さな市町村にとっては大きな財政的な負担になっていくものと考えられる。一方、浄化槽は税金ではなく、個人の負担によって賄われているため、起債の返済による市町村の財政問題は起こらない。

  試算してみると、これまで滋賀県の下水道建設に用いられた費用で小型合併処理浄化槽を設置したと仮定すると、優に現在の滋賀県の人口を超してしまうこととなった。現在、滋賀県の下水道普及率は75%を越えているが、小型合併浄化槽で家庭排水対策が終わってしまっていれば、琵琶湖の汚濁対策を次の農業排水や初期雨水対策に移すことが可能になっていたことになる。財政的な面からも浄化槽を見直す必要があるのではないだろうか。