| 「環境技術」2006年4月号:特集のねらい 砒素の特性とその環境水からの除去 藤川 陽子 (京都大学) 環境水中に存在する高濃度の砒素の起源は、多くの場合天然の地層・鉱物からの溶出である。地下水揚水のためのさく井や鉱物資源の採掘・精錬等の人間活動が高濃度の砒素を水源に導入する原因となる。アジアの中でもバングラデシュでは表流水の汚染のために砒素濃度が高い地下水を水源として使用せざるをえず、砒素中毒が深刻な問題となっていることは周知の事実である。 わが国でも砒素を含む地下水のために閉鎖・放棄された井戸がある。地下水資源の有効利用のために高い除去率をもちかつ低コストな砒素除去技術が重要である。ただし必要な除去率は現場の状況によって異なり、また同じ技術でも適用場所によってコストに違いが出る。適用できる技術にはバラエティがあることが望まれる。 本特集は「砒素の特性とその環境水からの除去」と題して、飲料水・浄水等の製造のための水源から砒素を除く処理方法について整理することを目的とした。 特集ではまず砒素の毒性や化学的性質を解説した(「砒素の人体への影響 ―― 地下水砒素汚染との関連」、「水環境中での砒素の挙動・特性に対応した除去方法の選択」)。それに引き続き、実際に施設設備を設置した実績のある企業数社から各社の砒素除去技術の概要と原理、施工例ならびにコスト試算例を報告して頂いている(「無機イオン交換体による砒素の除去」、「ヒ素吸着ろ材を用いたろ過実験」「セリウム系吸着剤を用いた地下水、湧水中の砒素除去」)。 本特集で特に各社の製品のコスト試算を依頼したのは、現場においてコストを左右する要因を明らかにすることで、今後新商品や新しいシステム開発を行うにあたり、注目するべきポイントを明らかにする意図があった。各報告を見ていただくと明らかなように、砒素除去技術を既存の水処理システムに組み込むことで設備設置コストを低減した例、逆洗しやすい比重の吸着剤の製造、吸着剤の再生費用等が挙げられている。 本特集が今後の砒素除去技術開発の進展にいささかなりとも貢献できれば幸いである。 →TOP |