| 2008年2月号 特集のねらい PIは公共事業に有効か 藤森 茂之 公共事業の計画では参加が必要とされ、パブリックインボルブメント(Public Involvement(公衆関与、市民参画)、以下「PI」)という言葉がよく使われている。また、持続可能な社会をつくるための環境基本計画や各種の環境計画の分野でも参加は必須条件となっている。 PIは、アメリカで発達した概念であり、直訳すれば「市民を巻き込むこと」になる。つまり、政策過程に、広く国民(市民)を巻き込む(参加してもらう)ということになる。 一般的には、PIは「行政が計画の策定に際し、広く意見・意思を調査する時間を確保し、かつ、策定の過程を知る機会を設ける」しくみのことである。また、「事業実施段階で情報公開し、地域の住民と対話を重ねながら、その結果を計画づくりに反映しようとする住民参加手法」のことと言われることもある。 最近、公共事業の計画策定段階で市民に対して情報を公開し、意見を求めるものがよく見受けられる。釧路湿原の自然再生事業では、自然再生協議会がニュースレターを頻繁に発行するとともに、自然再生協議会や各種小委員会の活動状況等がホームページによって情報発信されており、「釧路湿原自然再生全体構想」の策定に当たっては、パブリックコメントの結果が反映されている。 このように公共事業に対する市民参加の機会は、今後とも増加するものと考えられるが、東京工業大学の原科教授によると、参加には次の5段階があるといわれている。 @ 情報提供(Informing)→A意見聴取(Hearing)→B形だけの応答(Reply Only)→ C意味ある応答(Meaningful Reply)→Dパートナーシップ(Partnership) @から順に参加のレベルは上昇し、Cの意味ある応答とは透明な形での議論をするということである。Dのパートナーシップでは、住民にとって権利と責任の双方が発生するため、全ての住民が関与できるわけではない。公共事業の利益は広域にわたるため、通常の公共事業ではレベルCの「意味ある応答」の参加が可能であるかが重要である。 事業計画の情報公開を早い段階から実施し、公衆の意見に対し事業者が意味ある応答をすることは、これからの事業を円滑に進めるための重要な条件と考える。 本特集では、「PIは公共事業を進めていくうえで有効か」といった観点から、4人の先生に執筆をお願いした。 谷本先生には、道路計画の構想段階におけるPIにどのような役割が求められるのか、今後満たしていくべきニーズについての討議こそがPIに求められていることを言及していただいた。 島津先生には、PIの理想と現実について、愛知万博検討会議、東京外郭環状道路、淀川水系流域委員会、戦略的環境アセスメント型のPI等、各種の事例から考察していただき、望ましいPIの姿として、発議権、ゼミ方式等、11点の必要事項について提案していただいた。 江崎先生には、市民の立場から、東京外郭環状道路のPIに参加し、事業者の主張のチェックや過去の事例を検証し、環境影響評価の内容のあり方や道路計画に市民が参加することの困難さ等について言及していただいた。 今本先生には、淀川水系流域委員会の前委員長を務められた経験に基づいて、私的立場から委員会の活動内容と委員意見の合意形成の実態について紹介していただいた。 PIは、実施することが目的でなく、市民等のニーズを反映した計画の高質化、構想段階から計画策定までの経緯について、市民等から納得が得られることを目的として実施されるものであり、より効果的に目的が達成されるよう、PIの各種の課題を解決し、質的向上を図ることが重要と考える。 今後、公共事業を進めていくためにはPIは不可欠なものとなるが、その内容については改善していく点が多数あり、本特集がその一助となることを期待する。ご多忙の中ご執筆いただいた先生方に深く感謝申し上げる。 (中央復建コンサルタンツ梶^本誌編集委員) →2月号目次へ →TOPへ |