2008年4月号 特集のねらい
         生物学的排水処理のプロセスとその維持管理
                         
村上定瞭
 
 水質汚濁の発生源は,生活や産業の活動に伴う排水である.生活系排水については,下水道,し尿処理施設,浄化槽,農業集落排水施設などの生活排水処理施設により汚濁負荷の軽減が図られている.産業系排水については,水質汚濁防止法によりその水質基準が定められ,個々の事業所の状況に対応した処理施設により排水が処理・放流されている.
 生活や産業からの排水を巡る今日の課題として多くの事柄が挙げられ,それらが相互に関係している.これらの課題の中で特に問題となっている事項は,@生活様式や産業構造の変遷と排水量・組成の変化,A用水の節約や排水のリサイクル,B省資源・省エネルギーと地球温暖化対策,C厳しい財政事情と施設の老朽化対策(特に,公共排水処理施設),D規制強化と処理機能の高度化,E処理施設の運転管理に係わる人員削減や団塊世代の退職に伴う技術継承などである.
 ところで,排水中の汚濁物質の組成や濃度は,生活系・産業系で全く異なる.生活系排水は,夾雑物を除くと生物由来の汚濁物質が主成分で,生物学的処理技術を中核とするプロセスにより浄化される.産業系排水は,その事業分野により,無機系または有機系あるいは双方の汚濁物質を含み,組成や濃度も異なり,その浄化プロセスは様々な要素技術の中からのいくつかの選択とそれらの組合せにより構成されている.
 以上述べたような生活・産業からの排水に係わる諸課題に対し,本特集では,排水処理施設に広く適用されている生物処理プロセスに的を絞って,排水組成・性状の特徴およびその処理プロセスの基本原理と維持管理に関する特集号を企画した.
 本特集は,生物処理プロセス全般および生活・産業の分野ごとの生物処理プロセスに係わる解説から構成されている.本特集で取り挙げた分野ごとの排水として,生活排水分野からは下水,農業集落排水,し尿と浄化槽汚泥,農畜水産業分野からは畜産排水(畜産廃棄物),工業分野からは食品工業排水,IT工業排水,化学工業排水をそれぞれ取り上げた.執筆は,それぞれの排水処理の分野で活躍されている研究者・技術者・管理者の方々にお願いした.各解説の内容は,排水組成の特徴,施設・設備の概要,プロセス設計や維持管理に係わる事項の概説に加え,今日の排水処理に係わる諸課題も含めたものとなっている.
 生物処理全般についてはプロセスの基本原理と運転管理,下水については標準活性汚泥の維持管理とその課題,農業集落排水については処理施設の機能強化,し尿・浄化槽汚泥については再生処理センターの役割と施設・設備,畜産排水については養豚糞尿のバイオガスプラント,食品工業排水については基本プロセスと維持管理,IT工業排水については処理施設の構成と生物処理の維持管理,化学工業については生物プロセスとその維持管理をそれぞれ中心とする解説がなされている.
 各解説とも紙枚の制限もあり,その内容も特に重要な事項のみに留めてあるが,今日の排水を巡る諸課題の解決に関して示唆に富む内容となっている.本特集が,各分野の排水処理の業務担当者の方々に対し,施設設備の運転管理または新設・更新・増設等に関する諸課題の解決への参考となれば幸いである.また,相談事項等があれば,本誌事務局または分野ごとの執筆者に対してご照会をされたい.
                            (広島商船高等専門学校/本誌編集委員)

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