| 「環境技術」2008年5月号 特集のねらい 有機フッ素化合物PFOS,PFOAによる環境汚染 昨年5月,国内のいくつかの新聞で有機フッ素化合物PFOS,PFOAの名前が紙面を飾った。その記事の内容は,全国的な調査結果から,これらの物質が京阪神地域の河川水中に高濃度で存在し,水道水や住民の血液中の濃度も高いと言うものであった。記事の内容の一部はすでに2003年に報道されていたが,今回の報道では,その後の調査結果を合わせPFOS,PFOAによる環境汚染の現状が改めて示された。この全国調査を実施したのが京都大学小泉研究室・岩手県の研究グループである。 有機フッ素化合物のPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸),PFOA(ペルフルオロオクタン酸)は,特集論文に詳述されているようにフッ素系の界面活性剤である。界面活性剤の疎水性部分であるアルキル基の水素原子がフッ素原子に置き換わることにより界面活性剤作用がより強まり,強い撥水性,撥油性,化学的安定性などを示したことから,私たちに馴染み深い製品をはじめ家庭や産業界で広く用いられることになった。しかし,これらの物質は発ガン性や発達毒性などの有害作用を有し,微量ではあるが環境中に広く残留することが明らかになってきた。国際的にも,PFOSはクロルデン,ペンタブロモジフェニルエーテルなどとともにPOPs条約への追加が検討されており,経済産業省も,産業界に対して“PFOS製造禁止に伴う代替可能性”について調査を行うようになってきた。PFOS,PFOAは第2,第3のPCBになるのであろうか。 本特集では,このような新たな環境汚染物質であるPFOS,PFOAの最新情報について,物性や分析法から環境汚染の現状や無害化処理法までを4編の論文で報告する。 すなわち,「物性,製造と分析法」では,物性や製造法の概要とともに水,大気,ヒト・生物試料に関する詳しい分析法について,岩手県環境保健研究センターの齋藤憲光先生および京都大学大学院医学研究科の原田浩二先生に執筆いただいた。「国内および国際的動向」では,PFOS,PFOAの汚染問題の発端となった米国3M社,DuPont社の対応やUSEPAの動向,国内の動きなどについて,京都大学大学院医学研究科の小泉昭夫先生および原田浩二先生に執筆いただいた。「環境汚染の現状と健康リスク」では,国内の汚染状況や詳しい毒性情報・ヒト健康リスクについて,同じく原田浩二先生および小泉昭夫先生に執筆いただいた。また,最後の「分解・無害化反応システムの開発」に関しては,自ら開発されたヘテロポリ酸,過硫酸イオンなどよる光分解反応や亜臨界水反応を中心に,長年ご研究されている(独)産業技術総合研究所の堀 久男先に執筆いただいた。 なお,本特集では「有機フッ素化合物PFOS,PFOAによる環境汚染」のメインタイトルのもとに各論文を配しているので,各論文のタイトルからは「PFOS,PFOAによる」と言う表現を省いた。しかし,各論文は単独で引用される場合があるので,それを考慮して,各論文のタイトル上に「PFOS・PFOA」の名称をサブタイトルとして加えた。 有機フッ素化合物の環境汚染については,最近ではPFOS,PFOAにとどまらず,フルオロテロマーアルコールなど環境中で前駆物質となっている関連物質の環境濃度に関する調査結果も報告されるようになっている。このように,有機フッ素化合物に関する環境問題の奥は深い。有機フッ素化合物汚染の全体像については改めて特集を組みたい。 古武家 善成(編集委員/(財)国際エメックスセンター) →5月号目次へ →TOPへ |