「環境技術」2011年6月号 記事情報

掲載年 2011
巻(Vol.) 40
号(No.) 6
321 - 321
記事種類 特集のねらい
記事タイトル 「バイオマス資源の確保と新技術の導入−上流側からの視点・新思考」特集
著 者 法貴 誠
第1著者ヨミ HOUKI
第1著者所属 三重大学名誉教授
要 旨
特集タイトル バイオマス資源の確保と新技術の導入−上流側からの視点・新思考
特集のねらい  地球への太陽エネルギー量,光合成の効率などは明らかで,バイオマスの潜在量や変換についての研究成果は多く存在している.それにもかかわらず日本においてバイオマス利活用は欧米に比べ遅れている.日本でのバイオマス利用については多くの場合エネルギー変換に重点がおかれ,ともすれば収集や運搬,多段階でのマテリアル利用が看過されてきた.その結果バイオマス利用では資源の収集や確保という大きな課題が未解決で残る.
 森林バイオマスの利用に関しては欧米では機械化が進み,安価で収集・運搬ができる.一方,地形が急峻な日本では技術開発が遅れ,道路網も整備されていない.今や衛星を利用した森林管理技術,作業安全と人件費低減のためのロボット技術なども視野に入る.
 もう1つの問題は日本でバイオマスに関する法制が複雑なことである.関係省庁では管轄が複雑にからみ合い同じ性状の汚泥であっても対応は農林水産省,国土交通省,環境省の三省で異なる.さらに,剪定枝や間伐材が取り扱い業者により一般廃棄物になったり,産業廃棄物に分かれたりする.また,籾殻は農林水産省,おがくずは林野庁での扱いになる.バイオマス利活用に関わる自治体や企業が煩雑な事務処理にわずらわされない法制の簡素化・緩和が望まれる.
 本特集ではバイオマスの上流・中流側いわゆる生産・収集・運搬・処理・マテリアル利用のあり方や課題に焦点を当てる.同時に“Think globally, act locally.”をモットーに,地球規模から地方自治体の現実問題まで広範な内容を取り扱った.(1)(本庄・土井)はバイオマス資源について概説し,日本でのバイオマス利用の実態を欧米と比べ考察する.また,国の法制にも触れながら各種バイオマス分類の実態や需給の問題を明らかにする.(2)(鳥井)では,衛星画像によるバイオマス情報のリモートセンシングや地上計測データとのシミュレーションによるバイオマス資源の評価の可能性を紹介する.近い将来バイオマス資源の地域特性や生産量の客観データを地球規模で把握し得る技術となろう.(3)(近藤)は森林バイオマスを中心にした生産・管理,集材や木材加工における各種ロボットによる自動化や作業安全,省力化とコスト低減の可能性につき紹介する.森林が7割を占める日本でのバイオマス資源の確保・利用には欠かせない技術であろう.(4)(舩岡)では森林バイオマスを木材とパルプのみというピンポイント思考からより長期的な森林と木材の動的ダイナミクスへの発想転換の必要性を提示している.これは森林の資源特性を動的に理解して利用する新しい循環社会を目指し,木材と紙の利用,その後は燃焼廃棄するという現行の仕組みを問い直すものである.人間の基準ではなく生態系の基準で森林資源を見直すという視点は新鮮である.また(5)(清水)ではエネルギー農作物の生産におけるエネルギー消費の低減という基本的問題を分かりやすく解説する.エネルギー作物から液体燃料を生産するに要するエネルギーを特定し,休耕田を含めた今後の国土利用の適正化や長期的な環境・エネルギー政策の立案にも資するものである.さらに(6)(井狩・西村)は現場に密着した甲賀市での生ゴミ処理の活動の現状と課題について紹介する.今まで多くの自治体では焼却され有効利用がされてこなかった家庭系生ゴミの資源ゴミ化プロジェクトは地域における資源循環社会という面からも意味が大きい.
 本特集はバイオマス資源の上流側を中心にして6編で構成したが,幸いにも幅広い分野から多様なテーマを得た.グローバルで新しい技術的視点,ローカルの現場や運営の課題,さらには生態系を基準とした森林資源の見直しなどの新思考はバイオマス源の確保や利用のあり方,長期ヴィジョンを考える上で示唆するところ大である.