「環境技術」2017年6月号 記事情報

掲載年 2017
巻(Vol.) 46
号(No.) 6
297 - 303
記事種類 特集
記事タイトル 英国の廃棄物処理―政策形成の変遷と実態―
著 者 吉田 暢
第1著者ヨミ YOSHIDA
第1著者所属 ジェトロ・アジア経済研究所
要 旨 1.はじめに
英国の廃棄物処理政策は,おおきくふたつの要素によって形作られてきた.ひとつは1980年以降,保守党政権が推し進め,1997年の政権交代の後も労働党政権によって継承された公共部門の「民営化」政策,いまひとつは,欧州連合(EU)が主導する環境政策の厳格な遵守要求である.公共部門の「民営化」も,EU が主導する規制遵守も,単独の影響は廃棄物処理政策に限ったことではなく,国民保健サービス(National Health Service,NHS)や食品安全規制などあらゆる分野にわたることである.しかしながら,こと廃棄物処理分野においては,この二つの要素が英国における「広範な廃棄物処理市場」を形成し,それまでの同分野の構造を変化させてきた1).また後述するように,廃棄物処理政策の実施面における地方自治体の担う役割もこの分野のカギとなる.
英国は,周知のとおりひとつの国家の中にイングランド,スコットランド,ウェールズ,北アイルランドという四つのそれぞれに相応の自治権をもった地域が同居する「連合王国」である.それゆえ廃棄物処理政策も地域ごとに一定程度独立したプロセスを辿ってきた.本来であれば,そのひとつひとつに焦点を当ててご紹介すべきであるが,紙幅の関係上,すべてを網羅することはできない.そのため,本稿において英国と記載する場合は,原則的には四つの地域を含んだ全体を指すが,都度必要に応じて個別の地域について言及することとする.ただし,廃棄物の量が最も多いのはイングランドであり,英国全体で年間に排出される家庭廃棄物(Household Waste,HHW)の8割以上を占めている2)ことは,読者に意識していただきたい点である.また本稿において用いる「廃棄物」の用語が示す範囲は,特に断りがない限り,英国・環境食糧地方省(Department for Environment, Food &Rural Affairs, DEFRA)の「地方自治体が回収した都市廃棄物」3)としている.これには,家庭廃棄物および企業等から排出される事業系廃棄物(Commercial Waste)が含まれる.都市廃棄物(Municipal Waste)が,本稿において取り上げるEU の主要な政策目標の対象になっているためである.(以下略)
キーワード:英国,廃棄物処理政策,環境
特集タイトル 海外の廃棄物処理の動向
特集のねらい