「環境技術」2017年7月号 記事情報

掲載年 2017
巻(Vol.) 46
号(No.) 7
343 - 343
記事種類 特集
記事タイトル 特集のねらい(室内空気汚染の低減対策と規制の動向)
著 者 福山丈二
第1著者ヨミ FUKUYAMA
第1著者所属 武庫川女子大学薬学部非常勤講師
要 旨
特集タイトル 室内空気汚染の低減対策と規制の動向
特集のねらい  我が国では1990年代に室内の内装材や生活用品から放散される室内化学物質汚染が注目され,居住者の健康被害が社会問題となった.厚生省(当時)では,2000年に「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」を立ち上げ,「室内空気に係るガイドライン」の作成に向けて審議された.2002年の第9回検討会で最終的にガイドラインがまとめられ,ホルムアルデヒド等13物質について室内濃度指針値が策定された.また,厚生労働省では,2001年4月に全国の地方公共団体に対してシックハウス問題の相談窓口を設置するように指導し,ほとんどの地方公共団体が設置した.このシックハウス問題の対策を推進するためには,地方公共団体が住民の健康被害の相談窓口を持ち,行政部局が試験研究機関と連携しながら,その実態を把握し,対策を指導する機能を保持することが重要と考えられる.
この室内空気汚染の指針値策定から,15年が経過した.この間,多くの調査・研究が行われ,室内空気汚染のその後の実態調査データや個々の化学物質の毒性に関する新しい知見が蓄積されてきている.また,世界保健機関(WHO)では室内空気ガイドラインを三つのカテゴリー,即ち,@湿気とカビのガイドライン(2009年),A汚染物質に対する個別のガイドライン(2010年),B室内の燃料の燃焼に関するガイドライン(2014年)に分類し,公表している.これは室内空気汚染が,先進国だけでなく世界的な問題であるという考えが根底にある.また,粒子状物質にも2005年に空気質ガイドラインが公表され,室内空気にも適用可能になっている.このように室内空気汚染に係るガイドラインにも改定の時期がきていると考えられ,厚生労働省では「シックハウス問題検討会」を2016年に第19回と第20回の会議,また,2017年に第21回の会議が開かれ,室内空気に係るガイドラインの規制項目や指針値について審議が行われている.
そこで,本特集では室内空気汚染の規制の動向,未規制の室内汚染物質の室内濃度,行政部局の対応,車室内のVOC の低減策,生物系アレルゲンの汚染実態および健康被害等について,各分野の専門家に最新情報をまじえた解説をお願いした.
まず,近畿大学医学部環境医学・行動科学教室の東賢一准教授には,諸外国の規制の動向として主にWHO の室内空気質ガイドラインについて解説していただいた.また,フタル酸エステルのような多経路暴露が考えられる物質の包括的な健康リスク評価についても解説されている.
次に,しがシックハウス対策研究会の廣瀬恢氏には地方公共団体の室内空気環境問題に対する取り組み状況についてのアンケート調査結果をもとに解説していただいた.
名城大学薬学部衛生化学研究室の神野透人教授からは室内空気環境汚染全国実態調査の結果の紹介があり,その中で未規制のVOC である2―エチル―1―ヘキサノール,テキサノールおよびTXIB が,比較的高濃度で検出される住居が存在することが報告されている.また,第21回シックハウス問題検討会で提案された4化合物の指針値改定や新規3化合物の指針値設定についても紹介されている.(一社)自動車工業会の石橋正人氏には,自動車車室内のVOC 低減に対する取り組みについて詳細にご紹介いただいた.次に,潟Gフシージー総合研究所暮らしの科学部IPM 研究室の川上裕司氏にはダニ・カビ等の生物アレルゲンの室内汚染の実態について調査データをまじえて解説していただいた.最後に,北海道大学環境健康科学研究教育センターの岸玲子教授のグループには室内空気中およびダスト中のアルデヒド類,VOC およびSVOCの汚染実態とシックハウス症候群やアレルギー症状との関連性について解説していただいた.
本特集が,今後の室内空気汚染の低減のための調査研究の一助となれば幸いである.