「環境技術」2017年8月号 記事情報

掲載年 2017
巻(Vol.) 46
号(No.) 8
395 - 395
記事種類 特集
記事タイトル 特集のねらい(東アジアの環境研究動向 ー大阪市・ソウル特別市・北京市の研究者の協働を例として)
著 者 見澤一裕
第1著者ヨミ TAKAMIZAWA
第1著者所属 岐阜大学名誉教授
要 旨
特集タイトル 東アジアの環境研究動向 ー大阪市・ソウル特別市・北京市の研究者の協働を例として
特集のねらい 国連統計によると,2007年を境にして都市部に住む人間の数が,農村部の人口を上回るようになった.過去60年間で都市化は急速に進んだ.1950年では,70%の人は農村部に住み,都市で居住する人は30%であった.2014年では,54%の人間が都市部に住んでいる.そしてこの傾向は進み,2050年の都市部人口は66%となることが予測されている.ちょうど,中世である12世紀の人口分布の逆になる.
とくに,アジアとアフリカにおける都市化の進捗が著しい.1990年では,人口1,000万人以上のメガシティは10都市で,世界人口の7%に当たる1億5,300万人が住んでいた.2014年では,メガシティは28都市で,世界人口の12%に当たる4億5,300万人が住んでいる.人口500万人から1,000万人のラージシティは43都市あり,3億人以上の人が住んでいる.2014年での人口ランキングは,東京,デリー,上海,メキシコシティー,ムンバイ,サンパウロと続く.
このような世界の人口分布予測から,今後の政治・経済をはじめ人の活動にかかわることの大部分はメガシティを含めた都市問題が中心となることが考えられる.14世紀のヨーロッパでは,人口が都市部へ集中することによる公衆衛生上の問題に端を発したペストの大流行により人口が半減したことは教科書にも詳しく載っている事項である.環境問題もこれにあてはまるだろう.
今や,環境問題は,地球全体に広がるとともに,ローカルな生活の場においても形を変えて見過ごせない現象となって立ち現れている.例えば,ゴミ屋敷問題は高齢化社会の進行や老人介護問題とも結びついた公衆衛生や環境の問題となってきている.中国では,旧正月のお祝いで用いる爆竹や大量の線香による喘息をはじめとする環境悪化が毎年問題となっている.また,4月から5月になると黄砂やPM2.5の影響が日本全体を覆う.越境する大気汚染は,日本単独で解決できる問題ではなく,国際的な取り組みが必要である.
環境問題の解決のための国際的な取り組みは,国連機関をはじめ,政府間,学会,民間レベルなどとさまざまな活動がある.今回取り上げるEPAM(The Forum on Studies of Environmentaland Public Health Issues in Asian Mega-cities)は,韓国ソウル特別市,大阪市,中国北京市の研究者が中心となってはじめられた,メガシティを中心とした都市における環境問題と公衆衛生問題に取り組んでいる国際フォーラムである.筆者が知る限りでは,メガシティの問題に正面から取り組んでいる唯一のフォーラムである.環境問題の解決は,幅広い情報の収集とその解析があって初めて成り立つものと考えられる.その意味で,個別の都市間での情報交換の意義は大きい.本特集ではこの,EPAM の成立した過程をまず,紹介する.そして,EPAM で注目を浴びた日本,韓国,中国の研究例を示す.日本からは,マテリアルフローに基づく製品から分別回収する金属と焼却灰から回収すべき元素のグループ分けについてと浄化槽の運転条件と処理水質の関連という古くて新しい問題を紹介する.韓国からは,黄砂と真菌群集の関連という新たな課題の提案と移動発生源からの揮発性有機化合物排出インベントリーの再評価の2題を取り上げた.中国からは,健康な成人の心拍変動への交通関連大気汚染と騒音の影響についてのコホート研究を示す.そして,最後にEPAM の今後について誌上座談会を行い,それをまとめた.
本企画の日本側の執筆者や座談会への参加者の多くは,環境技術学会会員としても活動している.本誌読者と共有できる問題は多いと考えており,今回の企画となった.関連の活動をお考えの方々へ少しでも参考になれば幸いである.