「環境技術」2017年9月号 記事情報

掲載年 2017
巻(Vol.) 46
号(No.) 9
455 - 455
記事種類 特集
記事タイトル 特集のねらい<防災と情報通信・ロボット技術>
著 者 古武家善成
第1著者ヨミ KOBOKE
第1著者所属 神戸学院大学
要 旨
特集タイトル 防災と情報通信・ロボット技術
特集のねらい  防災における機械化・機動化については消防分野での事例が身近である.江戸時代の木製腕用ポンプ(竜吐水)にはじまり,明治前期には蒸気ポンプ,中・後期には自動車式蒸気ポンプ車や木鉄混合製救助はしご車,大正期には消防ポンプ自動車,火災報知器,ダイヤル式電話通報設備,昭和戦前期には水槽付ポンプ自動車等が導入された.
戦後の民主化に伴い,1947年に消防制度が警察機構から分離・独立し自治体消防が設立されると,消極的(火消し的)消防から予防的消防に重点が移るとともに,国の財政的補助のもと,消防ポンプ自動車,三輪ポンプ自動車,可搬式小型動力ポンプ,はしご車,放水塔車,照明車,さらには救急車と,消防の機械化が進んだ.1970年代以降には,化学消防車,救助工作車(レスキュー車),消防・防災ヘリコプター等車両・機械の高性能化や科学消防力の整備が一層進んだ(消防防災博物館ホームページ).
このように,消防・防災分野では百数十年にわたり消防・防災力の機械化・機動化が地道に続けられてきたが,このような営為を崩す事象として,1995年の阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災,原発過酷災害が起った.
未曽有の大災害ではこれまでの機械力投入の有効性に限界が見られ,最後は人力に頼る場面が多数生じた.この人力の中には,消防隊や救助隊等専門の人材だけでなく,一般市民の災害ボランティアも含まれる(阪神・淡路大震災が発生した1995年は日本の「ボランティア元年」と呼ばれる).そこで,個々の人力に適した小型で高性能の機械力が求められている.一方,東日本大震災では,個々人の防災行動や感情を反映した多数の情報,すなわちビッグデータが災害のリスクマネジメントやクライシスマネジメントに有用との観点から,これを取り扱う手法・技術が注目されている.本企画では,このような近年の災害の状況を踏まえ,これに対処する技術として情報通信技術(ICT)やロボット技術に焦点を当てた.本誌においては初めての企画である.
静岡大学情報学部の井ノ口宗成先生と新潟大学危機管理本部の田村圭子先生には,「安全・安心な社会のためのICT 活用の歴史と展望」というタイトルで,わが国における関東大震災以降の防災対策の歴史を振り返るとともに,普及が進む携帯端末に搭載されたGPS 等ヒューマンセンサー情報の活用,不特定多数の人の情報判断と迅速なコンピュータ処理とを組み合わせたクラウドソーシングの技術などについて概説いただいた.
防災ICT の今後として,運用する仕組み,組織体制,利用者の能力等の総合的向上の重要性が指摘されている.消防庁消防研究センターの天野久徳先生には,「石油コンビナート火災・爆発対策用ロボットシステムの研究開発」というタイトルで,過酷災害現場に導入される消防ロボットシステムの開発状況について詳述いただいた.
このシステムでは飛行型や走行型の偵察・監視ロボット,放水砲ロボット,ホース延長ロボットなどが組み合わされているが,完全自律型ではなく,指令システムからの選択やホース接続など消防隊員の関わりを組み込むことにより,人とロボットの総合力を最大限引き出すことを可能にしている.小型の機械ではないが人との相性が良い防災技術と言える.
さて,最後に残念な報告をしたい.本特集の3番目の論文として,京都大学防災研究所の畑山満則先生に「災害情報システムにおけるビッグデータの利用」というタイトルで執筆をお願いしていたが,諸般の事情で次号掲載となった.今話題の災害ビッグデータ解析について,現場に即した利用の観点から考察されているので,期待していただきたい.