「環境技術」2017年10月号 記事情報

掲載年 2017
巻(Vol.) 46
号(No.) 10
518 - 521
記事種類 特集
記事タイトル 閉鎖性海域の水環境保全における環境配慮型構造物の位置付け
著 者 坂口 隆
第1著者ヨミ SAKAGUCHI
第1著者所属 環境省
要 旨 1.はじめに
 我が国の閉鎖性海域では,戦後の高度経済成長期の沿岸域における急激な人口の増加,工場立地等の産業活動の集中によって,陸域から汚濁物質が過剰に流入するようになり,赤潮による漁業被害や油流出による環境汚染が発生するなど大きな社会問題となった.浅海域では,埋立てによって多くの藻場・干潟が失われた.本稿では,瀬戸内海を中心に環境の変遷を振り返りつつ,環境配慮型構造物の環境保全施策上の位置付けについて報告する.
 瀬戸内海では,1960年から1990年の間に約7割の藻場(アマモ場)が,1898年から2006年の間に約5割の干潟が消失したと推計されている(図1,図2).
 藻場は,窒素・りんの吸収による富栄養化の防止や魚介類の産卵や仔稚魚などの生息の場の提供,酸素の供給の機能,干潟は,二枚貝等による有機物の分解・除去,窒素・りんの吸収による富栄養化の防止や脱窒による窒素の除去に加え,渡り鳥等の餌場や中継地としての機能など生態系の中で非常に多くの役割を果たしている.また近年は,CO2の吸収・貯留といった機能も注目されている(表1).
 上述のとおり,瀬戸内海ではこれらの藻場・干潟などが大きく減少し,藻場・干潟が担っていたこれらの重要な機能も失われ,生態系が大きく変化した.
 このような状況を受け,瀬戸内海環境保全臨時措置法に基づき,埋立てを厳しく抑制する施策が講じられ,法施行後の沿岸の埋立てのスピードは大幅に抑制された.一方で,その事業の必要性や水質への影響などの一定の要件を満たす場合は許可されたため,結果として,1898年から2006年の間に埋め立てられた海面30,000ha のうち,約半数は法律の施行後に失われている(図3).また,高度経済成長期には,備讃瀬戸,備後灘,伊予灘などを中心に建設工事に使用する海砂利の採取が行われた.これは,産卵,夏眠等の場として海砂利に依存するイカナゴの資源量を大きく減少させた要因1)としても指摘されている.このように戦後から高度経済成長期を中心に瀬戸内海をはじめとする大都市に隣接した閉鎖性海域の環境は人間活動による影響によって大きく変化した.
キーワード:瀬戸内海環境保全基本計画,生物の生息・再生産の場,水質浄化機能,藻場・干潟等の浅海域,底層溶存酸素量
特集タイトル 浅場機能の復元・再生・創出を目指した環境配慮型構造物
特集のねらい