「環境技術」2017年10月号 記事情報

掲載年 2017
巻(Vol.) 46
号(No.) 10
538 - 541
記事種類 特集
記事タイトル 貧酸素化する水域での生物共生護岸の生態学的評価
著 者 竹山佳奈、岩本裕之、山中亮一
第1著者ヨミ TAKEYAMA
第1著者所属 五洋建設(株)
要 旨 1.はじめに
 都市臨海部は多くが埋立地となっており,直立護岸で囲まれ,干潟や浅場がほとんど存在しない水域となっている.また,静穏な水域の場所が多く,陸域からの流入負荷により,富栄養化した環境になりやすい.このような閉鎖性水域では,特に水温の上昇する夏季に躍層が発達し,底層が貧酸素化することが問題となっている.水深が浅い運河域でも,水深1m〜2m 以深になると急激にDO が低下し,底層は貧酸素状態が続き,夏季には無酸素状態となる場所が多い.そのため,現状の運河域は,生物の生息環境としては非常に過酷な環境となっている.一方で,これらの沿岸域環境は,生態系にとって貴重な空間となる可能性がある.しかしながら,現状の運河域の多くは,直立護岸に囲まれた閉鎖性水域となっている.
 運河域の底層の貧酸素水は,水温・塩分躍層の形成により,広域に影響がおよんでいる可能性があり,局所的な底質改善では貧酸素水塊の改善策として根本的かつ持続的な効果は期待できないという報告もある1).そのため,現状の水質条件下において自然再生を検討する際には,浅場造成や生物共生護岸と組み合わせて考えていかなければならない.これまでは,主にカニ類や貝類等の底生生物を対象として,護岸表面に凹凸をつける等の工夫がされてきた2).一方,運河域あるいは直立護岸に出現する魚類相に関する報告は非常に少なく,東京湾の京浜運河3―5)や平潟湾6)などの数例,あるいは大阪湾7)や東京湾8)に関する報告しかない.しかしながら,魚類にとって,都市臨海部の運河域は静穏な水域であり,餌生物も豊富で,大型魚も少ないため,魚類の生活史にとって一時的な通過場所としてだけではなく,仔稚魚の成育場および汽水域に生息する魚類の主要な生息場として機能する可能性があると推測される.
 そこで,底層の貧酸素水からの避難場所となる構造物を酸素の豊富な表層に設置し,既設を通じた魚類の出現状況を調査し,運河域を利用する魚類相の特徴を明らかにするとともに,魚類を対象とした生物共生護岸の機能とその役割について明らかにすることを目的とした現地試験を実施した.
キーワード:生物共生護岸,閉鎖性水域,貧酸素,避難場所,魚類
特集タイトル 浅場機能の復元・再生・創出を目指した環境配慮型構造物
特集のねらい