「環境技術」2017年11月号 記事情報

掲載年 2017
巻(Vol.) 46
号(No.) 11
568 - 574
記事種類 特集
記事タイトル 人工湿地の浄化機構と普及への課題
著 者 矢野篤男
第1著者ヨミ YANO
第1著者所属 東北工業大学
要 旨 1.はじめに
 人工湿地(Constructed Wetland)による排水処理法は設置費が安く,維持管理の手間がかからずに効率的に汚水を処理できる新しい技術である.近年,世界中で人工湿地を利用した排水処理法の開発と実用化が進められている.欧米各国では水質改善の手法として人工湿地に関するガイドラインを作成し,生活排水,産業排水,農業排水等の数多くの排水処理に適用している1).現在,わが国では点源対策として小規模事業場排水,面源対策として農畜産排水について安価でエネルギーコストのかからない処理技術が求められている2,3)が,現状では適用できる技術がない.このような状況の中,わが国における人工湿地の取り組みとして,2005年に北海道別海町,2007年北海道遠別町に搾乳舎排水処理を行う人工湿地システムが完成し,筆者が把握しているところでは現在,26ヵ所の人工湿地が稼働している.しかし,わが国の人工湿地の取り組みは緒に就いたところであり,まだまだ人工湿地を用いた汚水処理については知る人は少ない.
 人工湿地にはいくつかのタイプがあり人工湿地での汚水の流れ方の違いにより表面流式と伏流式と大きく二つのタイプに分けることができる4).表面流式は湿地表面に汚水を流す方式で従来の植生浄化とほぼ同じで浄化効率は高くない.伏流式は湿地表面下のろ材を通じて汚水を流す方式で,表面流より面積当たりの処理効率は高く,冬場においても高い処理能を維持できる特徴がある.伏流式人工湿地には汚水を人工湿地の地表面下をゆっくりと水平方向に流す水平流式と汚水を地表面に間欠的に散布して地下へ浸透させる鉛直流式の2種類があり,近年,これらの伏流式人工湿地が主流となっている.そこで本稿では伏流式人工湿地を中心に人工湿地の基本的な浄化機構を述べ,次いでわが国の人工湿地の普及における課題を述べたい.
キーワード:人工湿地,浄化機構,水平流人工湿地,鉛直流人工湿地,普及の課題
特集タイトル 人工湿地による水環境保全
特集のねらい