「環境技術」2017年12月号 記事情報

掲載年 2017
巻(Vol.) 46
号(No.) 12
624 - 629
記事種類 特集
記事タイトル 水域生態系における環境DNAモニタリング手法開発の現在
著 者 源 利文
第1著者ヨミ MINAMOTO
第1著者所属 神戸大学大学院
要 旨 1.環境DNA とは何か
 環境中に存在するDNA の情報から,生物の分布情報を取り出そうとする,「環境DNA 分析」と呼ばれる分析手法が近年急速に発展している.環境DNA とはその名の通り,環境中に存在するDNA のことである.例えば川の中には目に見えない微生物から魚や水生昆虫などに代表されるマクロ生物まで様々な生物が生息しているが,川から水を一杯くんでやると,その中には生きた微生物そのものや,マクロ生物の糞などを介して放出された生体外のDNA など,様々な形のDNA が存在している.このようなDNA を総称して環境DNA と呼んでいる.より狭義には,マクロ生物の放出した生体外DNA のことを環境DNA と呼ぶ場合もあり,定義は場合によって若干異なることもある.本特集では主としてマクロ生物の生体外DNA としての環境DNA に関する解説を行うが,一部微生物に関する話題もあるため,本稿ではより広い意味での環境DNA,すなわち環境中のDNA の総体としての環境DNA という定義を採用することとする.
 ここで,マクロ生物の環境DNA に関してもう少し詳しく紹介しよう.マクロ生物由来の環境DNA のソースは様々なものが想定されるが,大雑把に分けると,脱落した細胞,糞などの排泄物,粘液などの分泌物,繁殖行動時の配偶子,あるいは死んだ個体の分解などによるものが一次的なソースであると考えられ,二次的なソースとしては,捕食者やスカベンジャーなどの他生物の糞などとして出て来るケースが想定される1).このような由来で放出された環境DNA は,おそらく放出後に環境中で分解され,次第に小さな形状となっていくものと思われる.例えば,コイの水中環境DNA のサイズ分画を調べた研究によると,環境DNA 全体としては多くが0.2μm よりも小さな画分に含まれるが,コイの環境DNA 自体は1〜10μm の画分に最も多く含まれるということがわかっている2).このことは,我々が環境DNAと呼んでいる物のほとんどは,おそらく微生物由来の小さなサイズの粒子あるいは溶存状態で存在しているものであるが,マクロ生物の環境DNAは細胞片や細胞内小器官といった,比較的大きなサイズの粒子として水中にあることを示唆する.いずれにしても,水などの環境媒体は様々な生物のDNA で満たされているのである.
キーワード:環境DNA 分析,種特異的検出,メタバーコーディング,定量PCR,超並列シーケンス
特集タイトル 生物分布調査における環境DNA 分析の可能性
特集のねらい