「環境技術」2017年12月号 記事情報

掲載年 2017
巻(Vol.) 46
号(No.) 12
636 - 641
記事種類 特集
記事タイトル 水生動物の生物量,季節分布と移動における環境DNAを用いた推定
著 者 高原輝彦
第1著者ヨミ TAKAHARA
第1著者所属 島根大学
要 旨 1.はじめに環境DNA
(英語表記ではenvironmental DNA:eDNA)分析とは,湖沼や河川などで採取した水試料に含まれる生物由来のDNA の情報を調べることで,水棲動物の生息状況を評価する生物モニタリング手法である.環境DNA 分析では,野外調査では水(数ミリリットルから数リットルほど)を採取してくるだけであり,その次に,実験室に持ち帰った水試料に含まれるDNA の情報を分子生物学的手法などにより解析する.従来の捕獲などの調査と比べて,野外の作業時間と人的コストを軽減できることから期待が集まっている1).
 環境DNA 研究が始まった当初は,とりあえず現場で水を汲んで,そこから魚類や両生類などのいわゆるマクロ生物のDNA を本当に検出することができるのかどうかについての検証が主流であったと思われる.そして,近年では,湖沼などの止水環境や河川のような流水環境にかかわらず,野外で採取した水試料からは動物や植物を含む多くの分類群において,対象種のDNA が高い確率で検出できることが実証されている.加えて,対象種の在・不在の評価において,環境DNA 分析は,目視や採捕などの調査手法と比べて,感度良く検出できることが様々な研究報告によって明らかにされてきた2,3).
 現場で採取した水試料に含まれるDNA の濃度は,そこに生息する対象種の個体数や生物量に応じて高くなると容易に推測できる.そこで,採取した水試料に含まれるDNA の濃度から,対象種の個体数や生物量の推定ができるかどうかについては興味深く研究が進められてきた.環境DNA研究初期にはすでに,個体数や生物量などを水試料中のDNA 濃度で推定する試みが実施され,多くの注目を集めている4―8).しかし,環境DNA を用いた生物量推定の精度向上にはまだ多くの課題が残されている.そこで本稿では,最近の事例を中心に紹介しながら未解明の部分について整理し,個体数や生物量の推定に必要な要因などについて考察する.さらに,対象種の生態的特性を示す,季節的な分布パターンや移動に関する環境DNA を用いたこれまでの事例についても簡単に紹介する.
キーワード:eDNA,飼育実験,DNA 検出率,モデル式,リアルタイムPCR
特集タイトル 生物分布調査における環境DNA 分析の可能性
特集のねらい