「環境技術」2017年12月号 記事情報

掲載年 2017
巻(Vol.) 46
号(No.) 12
642 - 647
記事種類 特集
記事タイトル 環境DNAメタバーコーディング解析による生物群集解析
著 者 土居秀幸
第1著者ヨミ DOI
第1著者所属 兵庫県立大学大学院
要 旨 1.はじめに
 環境DNA 技術とは,本特集でこれまで述べられた通り,水中に存在する生物由来のDNA 断片を採取,分析することによって,生物の分布(在・不在)や生物量,個体数について推定する手法である1―3).これまでは主に,種特異的なDNA 断片を増幅し,リアルタイムPCR や電気泳動などにより1種ずつ判別してきた4―7).
 しかし,これら種特異的な分析によって,環境DNA から生物群集を明らかにすることは容易ではないことは想像に難くない.何十,何百種といる各生態系の生物種について,1種ずつ分析することは,非常に手間と労力が必要である.
 そこで近年では,これまでの種特異的な手法に加えて,超並列シークエンサ(次世代シークエンサとも呼ばれてきたもの)と呼ばれるDNA 解析装置を用いることで,環境水に含まれるある分類群(例えば魚類)に属する全ての種のDNA を同時並行的に解析する手法,いわゆる“メタバーコーディング”手法の開発が進んでいる.
 “メタバーコーディング”とは,対象分類群の種判別を可能にする遺伝子領域のDNA 断片配列をまとめて増幅し,超並列シークエンサを用いて塩基配列を決定し,それらをデータベースと照合することで種組成を明らかにする手法である.かつてはDNA バーコーディングと呼ばれていたが,超並列シークエンサ登場以降,多種のDNAを同時並列でバーコーディングすることが可能となった.そこで,「メタ」バーコーディングと呼ばれている.
 メタバーコーディングにより,わずか1リットルの水を汲むだけで,何十,何百という魚の種組成を明らかにできるようになった8).メタバーコーディング法の開発には,ターゲットとする分類群に属する種(のマーカー遺伝子)を網羅的に増幅するユニバーサルプライマーを作成する必要がある.これまで,ミトコンドリアDNA のCOI や12S 領域を対象とした様々なユニバーサルプライマーが開発されてきている.例えば,HCOI,LCOIなどのCOI 領域を増幅するもの9,10),ecoPrimer11)などがある.それらのユニバーサルプライマーは,これまで様々な場面で利用されてきたが決して性能(増幅効率やユニバーサル性など)が良いものではなかった.そこで,Miya et a(l. 2015)8)では,新たに魚類のミトコンドリアDNA の12S 領域を網羅的に増幅できるユニバーサルプライマーとしてMiFish を開発し,国内外で大きな話題となっている.
 本稿では,まずMiFish を用いた魚類群集の環境DNA メタバーコーディング解析方法について解説し,次に魚類以外での環境DNA メタバーコーディング解析例として,河川水生昆虫や哺乳類の解析について解説する.最後に,今後の環境DNAメタバーコーディング解析の展望を紹介する.
キーワード:環境DNA,メタバーコーディング,超並列シークエンス,群集解析
特集タイトル 生物分布調査における環境DNA 分析の可能性
特集のねらい