「環境技術」2018年5号 記事情報

掲載年 2018
巻(Vol.) 48
号(No.) 5
235 - 235
記事種類 特集
記事タイトル 特集のねらい(21世紀末を見据えたエネルギーのありかた)
著 者 本庄孝子、他
第1著者ヨミ HONJO
第1著者所属 元(国研)産業技術総合研究所
要 旨
特集タイトル 21世紀末を見据えたエネルギーのありかた
特集のねらい わが国では大型水力発電以外の自然エネルギーである太陽光,風力,小水力,地熱,バイオマス等を再生可能エネルギー(以下,再エネ)の中でも特に新エネルギー(新エネ)と分類している.1970年代の2度のオイルショック後,新エネの導入が進んだが,政府は1977年に原子力発電を主電源と設定し,1993年に太陽のみ重点化して以降,新エネ導入は下火になっていた. 
2012年7月に再エネによる発電を固定価格で買取る制度(FIT 制度)が開始されて以降,太陽光発電の導入が大きく進んだ.2015年のパリ協定で,わが国は温室効果ガスの排出量を,2030年に2013年比で26%削減との中間目標を示した.そして同年「長期エネルギー需給見通し」では,2030年の電源構成における再エネの占める割合を総電力量の22〜24%,原子力を20〜22%とした.世界では再エネの設備価格は低下して,化石燃料と同レベルの域に達してきた.2015年の世界の新規発電設備の50%以上が再エネであった. 
全エネルギーを再エネで供給することを目指す「RE100」が,世界の国,世界的な企業,世界及び日本の自治体などに急速に広がっている.わが国でも2018年5月に「エネルギー基本計画」(案)が出された.今後,一次エネルギー供給構造を低炭素化するための再エネ導入とともに,原子力発電の利用について国内での議論が進むと予想する. 
京都大学の藤川陽子氏は「日本のエネルギーの現状」と題して,政府の統計を使って,部門別最終エネルギー消費の推移,電力の電源構成や非電力と電力の一次エネルギー消費の推移等の基礎的事項を紹介している. 
東京大学大学院の小宮山涼一氏は「再エネ大量導入と電力系統の維持・運用,電力市場整備の方向性」と題して,電力系統への再エネ大量導入が予見される中,送配電設備の維持・運用などを紹介している.電力系統の再エネへの適応能力を高めることも必要で,託送料金の制度設計に関して,発電側基本料金,送配電網の効率的利用,ノンファーム型接続への料金措置,送配電網の固定費回収について述べている.再エネ導入拡大により,電源投資の予見性が低下するため,容量市場や,需給調整市場,連系線利用ルールの見直しが必要なことについても論じている. 
和歌山大学客員教授の和田武氏は「世界の再生可能エネルギー最新動向と日本の課題」と題して,歴史的にも詳しく述べ,最近の世界の再エネ動向の特徴は市民・自治体主導の取り組みが拡大しているとともに,再エネ発電は経済的にも有利だが,わが国のバイオマス発電では大半が輸入資源に依存する大規模発電であるなど,多くの課題に触れた. 
龍谷大学名誉教授の増田啓子氏は「我が国における大規模太陽光発電の現状と課題―導入拡大に向けた今後の問題点と環境影響」と題して,FIT制度における認定件数は,メガソーラーはわずか0.3%だが,買取価格では80%を占めること,パネル温度が上昇すると発電効率が低下して真夏は70℃前後になり効率が10〜20%低下すること,1MW のメガソーラーでは敷地面積1.57ha になり,森林伐採して設置した場合CO2削減効果はあまりないことを述べている.設備への外資系の参入,立地の難しさ,設備廃棄の課題等があり,2017年に事業者が遵守すべき事項が「事業計画策定ガイドライン」に盛り込まれた.豪雨によるパネルの浸水や土砂崩れをはじめ,種々の災害に,行政が建設の最適値を示すことも必要としている. 
(国研)産業技術総合研究所の藤原正浩氏は「太陽光エネルギーの多様な利用―二酸化炭素再資源化と海水淡水化」と題して,太陽光を用いて二酸化炭素からブタン合成で高い収率が得られる.また,約20nm の細孔を持つ浸水アルミナ膜の表面を修飾したのを用いて,紫外線と可視光照射で3.5%塩化ナトリウム水溶液から,塩濃度0.01%未満の水を得たなど,海水淡水化が可能になるとしている.