「環境技術」2018年5号 記事情報

掲載年 2018
巻(Vol.) 48
号(No.) 5
239 - 243
記事種類 特集
記事タイトル 再エネ大量導入と電力系統の維持・運用,電力市場整備の方向性
Direction of Electricity Market Reform under Renewable Energy Integration 
著 者 小宮山涼一
第1著者ヨミ KOMIYAMA
第1著者所属 東京大学大学院
要 旨 1.はじめに 
わが国では再エネの固定価格買取制度(FIT)が施行された結果,特に太陽光発電の導入量が2030年度の導入目標(64GW)を上回るテンポで急伸している.政策面でも再エネの主力電源化を目指す方針が示され1),長期的な導入拡大が想定される. 
しかし,太陽光発電や風力発電は,気象条件の影響を受けて出力が不規則に変動し,火力発電とは異なり特別な措置なしでは出力を自在に制御できず,電力系統への接続拡大が難しい.このような自然変動電源の導入量の最大化には,電力系統の容量の確保と運用の効率化が重要となる.前者の容量の確保では,電力系統のコスト抑制と電力安定供給への配慮,後者の運用においては,電力系統の再エネへの適応能力向上が必要となる. 
まず,電力系統のコスト抑制が再エネ大量導入の実現に向けて求められる.送電線の容量を増強すれば,再エネ接続可能量を引上げることが可能である.しかし系統容量の拡張には,大規模な投資や維持・運用コストが必要になり,送電線の利用料金(託送料金),ひいては,電力コストが上昇し,経済的に望ましいとは言い難い. 
また安定供給の実現には,需要に見合う電力供給能力を確保することが大前提となる.しかし,再エネ大量導入により,卸市場価格が低下して収入が減少し,火力など電源の固定費回収が困難となって(ミッシング・マネー問題),早期廃止や,新設やリプレースが停滞すれば,電源の供給力が不足し,電力価格の高止まりを助長する可能性がある.国際的にも,政策主導で再エネ導入を進めた電力市場でも問題となり,米国北東部(PJM)や英国等の電力市場では,電源投資回収の予見性を高める制度として,容量市場が導入されている. 
そして,電力系統の再エネへの適応能力を高めることも必要である.自然変動電源の出力変動に対応するため,例えば火力発電やデマンドレスポンス等の調整力の効率的な調達,運用が重要となる.また,系統の運用方策の高度化も有効であり,系統の広域運用や再エネ出力抑制を前提とした系統接続がある.広域運用は,再エネ出力変動に対してより多くの調整力を供給エリアをまたいで広域的に運用して系統の調整能力を高めることができること,より数多くの調整力を経済的な優位性に準じ運用できるため,コスト抑制に貢献する. 
現在わが国では,送配電設備の利用料金(託送料金)2),および電力システム改革の議論3)が進められている.本稿では,再エネ導入が関連する項目として,託送料金,容量市場,需給調整市場,広域運用等に関する議論の状況を紹介する.
特集タイトル 21世紀末を見据えたエネルギーのありかた
特集のねらい