「環境技術」2018年6号 記事情報

掲載年 2018
巻(Vol.) 48
号(No.) 6
302 - 306
記事種類 特集
記事タイトル 高解像度人工衛星リモートセンシングによる大阪湾の赤潮動態解析
Observations of Red Tide in Osaka Bay Using High-Resolution Satellite Remote Sensing
著 者 小林志保、中田聡史
第1著者ヨミ KOBAYASHI
第1著者所属 京都大学フィールド科学教育研究センター
要 旨 1.はじめに
 2010年に,海色センサGOCI を搭載した静止衛星COMS の運用が開始された.1日に1回の観測回数が上限であった従来の周回衛星とは異なり,この静止衛星は常に日本列島および韓国の上空にいるため,1時間に1回の海色データを得られることが大きな特徴である.また,空間解像度は500m と高く,沿岸海域の環境解析に適している.本研究ではこの人工衛星によって得られる海色データから,植物プランクトン現存量の指標となるクロロフィルa(Chl-a)濃度を推定し,半閉鎖性海域において頻繁に発生する赤潮の動態解析に用いる.
 集水域に大都市を抱える大阪湾,東京湾,伊勢湾などの半閉鎖性海域においては,赤潮や貧酸素などの問題が現在においても解消していない.大阪湾ではその湾奥部にマコガレイをはじめとする様々な魚類の稚仔魚の生育場があり,この水域における赤潮やそれにともなって発生する貧酸素化は,湾全体の生態系や水産業にも悪影響を及ぼすことが懸念される.人為・経済活動の盛んな沿岸海域においては,発生する赤潮が広範囲であるとともにその時間変化が激しいため,現場観測によるChl-a 濃度等の水質定点情報のみを用いて,赤潮の時空間スケールを把握することには限界がある(作野,2012).
 人工衛星によるリモートセンシングは,広い海域を高解像度・高頻度に捉えるために適した手法であるが,沿岸海域の海水は陸水由来の有色溶存有機物質(CDOM)や懸濁物質(SS)等の影響を顕著に受けるため,衛星観測によるChl-a 濃度の推定誤差が大きい(比嘉ら,2011).そのため,現場観測された定点・定線観測Chl-a 濃度データに加えて,現場採水や観測に基づいて得られたChl-a(現場Chl-a)の濃度等を用いて人工衛星から得られるChl-a 濃度データ(衛星Chl-a)の推定誤差を緩和するための補正式を,海域特性に応じて作成する必要がある.
 本研究では,各波長におけるリモートセンシング反射率(Rrs)を現場海域において測定し,静止衛星によって得られた衛星Chl-a の最適化を行っており,本報ではそれらのデータと他の人工衛星から得られる水温場,光学特性データを総合的に解析し,大阪湾における赤潮動態を調べた結果の一部を述べる.
キーワード:高解像度人工衛星リモートセンシング,閉鎖性海域,赤潮
特集タイトル 宇宙の眼と鳥の眼による環境測定技術
―人工衛星からドローンまで―
特集のねらい