「環境技術」2008年6月号 記事情報

掲載年 2008
巻(Vol.) 37
号(No.) 6
377 - 377
記事種類 特集のねらい
記事タイトル 「温暖化の現状と対策の行方」特集
著 者 増田啓子
第1著者ヨミ ますだ
第1著者所属 龍谷大学
要 旨
特集タイトル 温暖化の現状と対策の行方
特集のねらい  世界の年平均気温は2007年までの100年間に0.72℃,25年間に0.46℃上昇し,近年ほど上昇率が大きい.日本も100年間に1.2℃,25年間に1.0℃と,世界よりさらに上昇率は大きく,近年の温暖化が著しい.2007年の年平均気温を見ても世界は平年値を0.28℃,日本は0.85℃上回り温暖な年であった.日本のこの年の冬の平均気温は全国 153気象官署のうち63個所で高い記録を更新した.特に,2月の平均気温は平年値より 2.35℃も高温を記録した.夏の平均気温も,7月は平年を下回わったものの,8月は1.28℃,9月は1.94℃も高温を記録した.8月16日には熊谷や多治見では 40.9℃を記録し,国内最高値となった.8月の最高気温は821地点中101地点で観測史上最高を記録した.
 2007年は地球規模でも温暖で,地球温暖化の影響と考えられる洪水や干ばつや熱波が各地を襲った.この年,ノーベル平和賞に「不都合な真実」で地球温暖化を訴えたアメリカのゴア元副大統領と,「人為的な温室効果ガスが地球温暖化の原因である」と断定したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)とが選ばれ,温暖化は疑う余地はないものとなった.この受賞がきっかけで温暖だったこの年に,地球温暖化は世界中の人々に急速に浸透した.
 日本ではこの地球温暖化をさらに人々に浸透させる北海道洞爺湖サミットが2008年7月に行われる.90年比でCO2を20年までに25〜40%,50年までに60〜80%の削減目標とする次期枠組について議論される.議長国である日本は,12年までに90年比で−6%という目標さえ達成できそうにないのに,中長期目標を明確にする責任がある.福田首相は「地球温暖化対策は全ての国民に参加してもらい,低炭素社会のイメージづくりをしなければならない」と,その方策を議論するよう投げかけている.誰もが環境が悪くなることは望んではおらず,政府の主導しだいで温暖化対策に向けた環境保全活動は飛躍的に進むものと期待される.だが,地球温暖化対策ばかりを考えるあまり,その策が将来の人類や環境に悪影響を引き起こす環境問題となってはならない.そのためには,国,行政,企業,そして国民一人一人が地球温暖化を正しく理解し,本当に進めるべき対策をグローバルに長期的な評価をしながら進めなくてはならない.
 この特集では,現在,話題となっている温暖化の現状をより理解して,より良い対策へと導くため,次の7つの論文を紹介する.
1)現在の温暖化した気候は,過去の長い時間での気候変動から眺めると,どのように位置づけられるか.地球の気候をさまざまな時間スケールから眺め,現在の気候を考えてみよう.
2)日本の気温上昇を,世界の気温を上昇させている地球温暖化と,都市化によるヒートアイランド現象という2つの温暖化を識別してみよう.
3)我が国における都道府県の農業関連研究機関へのアンケート結果の解析から,温暖化の影響が水稲,麦類,大豆,野菜,花き,飼料植物,家畜生産などの農業生産現場で顕在化していることを述べ,その適応策がまとめられている.
4)地球温暖化における森林の位置づけや役割,京都議定書における日本の森林吸収源,および途上国の森林減少の問題などについて,考え直させる.
5)地球温暖化が人への健康面へどのように影響するのか,熱ストレスによる疾患や動物媒介性感染症について紹介し,未然防止を考える.
6)近年の暖冬傾向で琵琶湖の湖底の溶存酸素濃度が減少し,生物への影響が懸念されている.温暖化すると閉鎖性水域にどのような影響が現れるかを考える.
7)乏しくなっていく石油に代わるエネルギーは何が最善策なのか,風力発電や太陽光発電,バイオマス利用など再生可能なエネルギーの普及を最新動向から考える.