「環境技術」2016年11月号 記事情報

掲載年 2016
巻(Vol.) 45
号(No.) 11
563 - 563
記事種類 特集
記事タイトル 特集のねらい(大気中の超微小粒子(ナノ粒子))
著 者 藤田眞一
第1著者ヨミ FUJITA
第1著者所属 藤田環境技術士事務所
要 旨
特集タイトル 大気中の超微小粒子(ナノ粒子)
特集のねらい 微小粒子状物質(PM2.5)については,2009年9月に環境基準が定められ,現在,地方自治体において常時監視がなされ,環境省の指針に基づく注意喚起の有無についての情報提供等が行われており,また,PM2.5低減に向けた各種の取り組みがなされている.しかし,さらに微小な粒径100nm 以下あるいは50nm 以下の超微小粒子(ナノ粒子)については,その実態や低減対策,あるいはヒトへの健康影響について調査・研究が行われているのが現状である.
 本特集では,大気環境中のナノ粒子を中心に,測定技術やその動態,ヒトの健康に及ぼす影響,また,大阪府を中心としたその現状,主たる排出源である自動車の低減対策技術の現況と課題,さらには,労働環境における空気中のナノ粒子(ナノマテリアル)の問題について紹介する.
 まず,(国研)国立環境研究所環境リスク・健康研究センターの藤谷雄二主任研究員に,大気環境中のナノ粒子の測定技術,ディーゼル車・ガソリン車も含めた自動車からの排出の問題についての解説とともに,大気環境における動態について,交差点近傍における長期測定の結果や,道路沿道と後背地との濃度比較も含めて解説をいただいた.
 ナノ粒子は非常に微小であるため,体内の深部まで侵入し,呼吸器系だけでなく,循環器系やさらには胎盤までも通過するという特性があり,暴露濃度が高い場合には,その生体への影響が懸念される.東京理科大学研究推進機構の梅澤雅和研究員等には,ナノ粒子の生態影響のメカニズム,マウスに曝露した研究,ヒト胎盤組織実験系を用いた研究に基づき,ナノ粒子の妊娠期曝露が次世代の雄性生殖系や中枢神経系に及ぼす影響について紹介いただくとともに,ナノ粒子による生態影響の分子生物学的な理解について解説をいただいた.
 大気環境中のナノ粒子の実態について測定・調査を行っている地方自治体はまだ非常に少ない現状にある.その中で大阪府においては,2014年度から大阪市内の一般環境測定局と同一の場所においてナノ粒子の濃度測定と構成成分の分析を行っている.大阪府が実施したナノ粒子の調査結果と国内の他の地点における測定結果との比較など,一般環境におけるナノ粒子の現状について,(地独)大阪府立環境農林水産総合研究所の西村理恵氏に紹介をいただいた.
 大気環境中のナノ粒子の主要な発生源として,自動車からの排出ガスがある.現在,自動車NOX・PM 法の車種規制により,排出される粒子状物質の排出規制がなされているが,粒径の小さなナノ粒子の排出を低減するには克服すべき課題も多い.本特集では,ディーゼル車について,PM除去のメカニズムについての解説とともに,ナノ粒子防除について最適な設計のための捕集・酸化過程の粒子スケール可視化による情報活用の現状と課題について,東京工業大学工学院の花村克悟教授等に解説をいただいた.
 ナノ粒子については,大気環境中だけでなく労働環境における空気中のナノ粒子が及ぼす影響も重要である.窒素酸化物等の他の大気汚染物質と同様,ナノ粒子についても労働環境における空気中の濃度は一般環境中の濃度より遥かに大きい.特に,近年目覚ましい普及が進むナノテクノロジー関連の労働環境における問題がある.労働環境においてナノ粒子は1〜100nm の超微小粒子を意味するが,これは通常,金属やシリカなどナノマテリアルとして生産現場等で取り扱われる特定の物質から成っている.労働環境においてナノマテリアルが及ぼす健康への影響,その管理基準や規制の現状や方向性について,(独)労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の三浦伸彦上席研究員に解説をいただいた.
 本特集が,今後の超微小粒子対策のための研究や技術発展の一助となれば幸いである.