「環境技術」2018年3月号 記事情報

掲載年 2018
巻(Vol.) 47
号(No.) 3
115 - 115
記事種類 特集
記事タイトル 特集のねらい <人口減少時代の上下水道>
著 者 惣田訓、安達伸光
第1著者ヨミ SODA
第1著者所属 立命館大学
要 旨
特集タイトル 人口減少時代の上下水道
特集のねらい  日本の人口は2008年にピークに達し,その後は減少が続いている.国立社会保障・人口問題研究所の最新の推計によると,2015年から2065年までに,人口は12,709万人から8,808万人に減少し,高齢化率は26.6%から38.4%に増加するとされている.利用者が減り,節水型家電の普及などにより水使用量も減少すれば,独立採算を求められる上下水道事業は,同様に減少していく税収入からの補助・繰入もままならず,その収入は減少し続ける.
 このような社会インフラの大半は,高度経済成長時代に集中的に整備されたこともあり,施設の老朽化は著しい.地震,津波やゲリラ豪雨などの災害対策も考えると,その維持管理と更新に必要な多大な費用と労力を,減少し続ける勤労世代が負担することは困難である.老朽化が進むインフラを利用し続ければ,当然事故が起こるリスクも高まる.これを支えてきたマンパワーも減少するため,管路からの水漏れや道路陥没が頻発する中,対応も遅れ,その費用も膨大なものになる.浄水場や下水処理場を建設した経験のある人材も少なくなり,技術の継承も困難になる.人口減少が顕著な地方都市では,これまで当然のように提供されてきた,上下水道などの公的サービスが,突然停止してしまうことも現実味を帯びて来る.
 このような課題は,水道事業では厚生労働省の「新水道ビジョン」(2013)に,下水道事業では国土交通省の「新下水道ビジョン2100」(2016)などにまとめられ,官民連携,広域連携,事業間連携等による事業・経営の効率化などが求められている.
 世界的に見て,日本ほど人口が急減する国は例がなく,日本国内,特に地方都市での環境関連事業は,経営破綻の危機にさらされることは必至である.そこで本特集は,特に上下水道事業に焦点を当て,人口減少・高齢化時代の課題に対する認識を多くの方と共有するために企画した.
 鳥取大学の細井由彦先生には,「人口減少社会における上下水道事業」を執筆していただいた.その対応策として,兼業・連携・分散自立を,戦略として集約化・広域化・スポット対応の概念が解説されている.(公財)水道技術研究センターの田中稔氏には,「小規模水道事業等の現況と施設と管理の再構築に関する一考察」を執筆していただいた.多くの集落の視察経験に基づいた問題緩和への取り組みと技術開発の事例が紹介されている.名古屋大学の平山修久先生には,「これからの水道の災害危機管理」を執筆していただいた.回復力が低下する人口減少時代において,災害レジリエントな水道システムと事業継続マネジメントを確立するための課題が解説されている.和歌山大学の吉田登先生らの研究グループには,「エネルギー回収をめざした下水処理場インフラの連携と技術選択」を執筆していただいた.和歌山市における汚泥処理の集約化とごみ焼却場・産業工場との連携による下水処理場のエネルギー回収シナリオが提案されている.お茶の水女子大学の中久保豊彦先生には,「農村域における汚泥処理・資源化機能の統合」を執筆していただいた.群馬県におけるし尿処理場の更新と廃止のシナリオが,農畜産業やごみ焼却場,下水処理場との連携の視点から議論されている.
 人口減少時代における対応策として,「連携」がキーワードに挙げられているように,上下水道だけでなく,廃棄物処理やエネルギー利用などの多分野連携がさらに重要となる.次号と次々号では,「人口減少と廃棄物処理」,「21世紀末のエネルギーのあり方」が,特集される予定であり,この特集シリーズを通じて,人口減少時代の環境インフラの再編成が議論されることを期待したい.最後に,ご多忙のなか,ご執筆いただいた方々に深く感謝申し上げる.