「環境技術」2018年3月号 記事情報

掲載年 2018
巻(Vol.) 47
号(No.) 3
140 - 145
記事種類 特集
記事タイトル 農村域における汚泥処理・資源化機能の統合
   ―群馬県のケーススタディ―
著 者 中久保豊彦
第1著者ヨミ NAKAKUBO
第1著者所属 お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系
要 旨 1.はじめに
 生活排水処理インフラは,生活圏の形成を踏まえて整備されてきた.その基本的な考え方が,集合処理(下水道+下水処理場)と個別処理(浄化槽+し尿処理場)による分担である.人口密度を踏まえ,人口が密集した区域には集合処理を,人口密度が低い区域には個別処理を採用するという方針(図1,国土交通省1)を参考に作成)の下,生活排水処理の機能が分担されてきた.
 生活排水の処理について,全国値ベースで見ると2015年度末の汚水処理普及率は89.9%2)であり,国民の約1割(未処理率10.1%)が,生活雑排水を垂れ流ししている.更新されずに継続使用されている単独処理浄化槽の問題,ならびに非水洗化人口の解消を,人口減少下において取り組むという難題を我が国は抱えている.そこには,合併処理浄化槽への更新支援という従来のアプローチに加え,下水道既整備区域への居住誘導という都市計画的なアプローチも含まれる.この課題解決は,継続して集合処理(下水道)と個別処理(浄化槽)で分担するという枠組みで考えるべきである.
 ここで,生活排水処理の過程で発生する汚泥に焦点を当てると,し尿処理場を取り巻く環境が大きく変化している.し尿の発生量が減少し,し尿処理場での処理対象物に占める浄化槽汚泥の比率が増加するにあたり,し尿の処理を前提とした水処理設備(硝化・脱窒による生物学的窒素処理装置)を維持するかどうかが検討課題となる.その課題解決に向けた取り組みは,下記の二つの方向性に集約されると著者は考えている.
 ・水処理設備を維持した上でし尿処理場を改修する場合,余剰汚泥の処理プロセスにメタン発酵槽を設け,汚泥再生処理センターとして更新する.その際,メタン発酵によるバイオガス回収の増強に向け,生ごみや家畜ふん尿の受入も行い,汚泥再生処理センターを地域バイオマス事業の拠点とする.
 ・し尿処理場での浄化槽汚泥処理量を段階的に縮小し,廃止を模索する.浄化槽汚泥の処理機能は下水処理場が担う.消化槽を保有した下水処理場がその機能を担う場合は,生ごみの受入も選択肢とし,下水処理場が地域バイオマス事業の拠点となる.
 ここで重要となる論点は,集合処理と個別処理の分担は,後段の汚泥処理の観点から見ると大きく変容しつつあり,生活排水処理(集合処理:下水道,個別処理:浄化槽)+汚泥処理・資源化,という枠組みで捉えなおす必要性が生じている.
 そこで本稿では,2.で汚泥処理・資源化に向けた機能統合の方向性を論じる.3.では,著者による群馬県を対象としたケーススタディを紹介する.
キーワード:集合処理と個別処理,汚泥,厨芥(台所ごみ),メタン発酵,温室効果ガス
特集タイトル 人口減少時代の上下水道
特集のねらい