「環境技術」2018年7号 記事情報

掲載年 2018
巻(Vol.) 47
号(No.) 7
355 - 355
記事種類 特集
記事タイトル 特集のねらい<地球温暖化の現状と緩和・適応策の最新動向>
著 者 中坪良平
第1著者ヨミ NAKATSUBO
第1著者所属 兵庫県環境研究センター
要 旨
特集タイトル 地球温暖化の現状と緩和・適応策の最新動向
特集のねらい 近年,地球温暖化の影響により世界各地で異常気象による災害が発生している.日本でも記録的な猛暑や集中豪雨による甚大な被害が生じたことは記憶に新しい.また,気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書では,人間活動で排出される温室効果ガスに起因する気温や海面水温の上昇,海洋酸性化等により,自然生態系及び人間社会への様々な将来的リスクが指摘されている.地球温暖化のリスクを低減させるため,温室効果ガス排出抑制等の「緩和策」を進展させる技術開発は喫緊の課題である.一方,温室効果ガスの排出量がどのようなシナリオをとったとしても世界の平均気温は上昇し,気候変動のリスクは高まると予測されている.そのため,避けられない影響に対する「適応策」の推進も同時になされる必要がある.
 本特集では,地球温暖化がもたらす極端な気象・気候現象と,気候変動に対する緩和・適応策の最新動向について各分野の専門家に解説いただき,将来を展望していただいた.
 塩竈秀夫先生(国立研究開発法人国立環境研究所地球環境研究センター)には,地球温暖化と極端な気象・気候現象との関係について,観測事実に基づく「過去の温暖化」による影響と,気候モデルで予測された「将来の温暖化」による影響について概説いただいた.本稿により,現状で明らかとなっている気象・気候への温暖化の影響を正しく理解でき,次稿以降で述べられる緩和・適応策の動向を読む際の前提となる知識の習得が期待できる.
 清水淳一先生(公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)企画調査グループ)には,緩和策の一つである二酸化炭素分離回収・貯留(CCS)技術の動向について概説いただいた.CCS は,温暖化の緩和のために不可欠な技術であるとの国際的認識はますます高まっており,今後,世界的に導入の拡大が期待される.本稿では,CCS の主な要素である回収,輸送及び貯留のうち,回収と貯留の技術動向を,RITE での研究開発技術の紹介を交えながら概説いただいた.
 橋ひとみ先生(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)省エネルギー部),他3名の先生には,わが国の「省エネルギー技術戦略2016」に掲げられた省エネルギー技術に関する各部門の重要技術を概説いただくとともに,NEDO で推進されている「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」の概要と,当該プログラムで支援された具体的な成果事例を紹介いただいた.
 肱岡靖明先生(国立研究開発法人国立環境研究所社会環境システム研究センター)には,気候変動への適応について,平成27年に閣議決定された「気候変動の影響への適応計画」や,本年末に施行予定の「気候変動適応法」などの最新の政策動向を概説いただいた.また,地方自治体や国民が効果的な適応策を検討していく上で必要となる視点を述べていただいた.わが国の適応策に関しては,まだ端緒が開かれたばかりであるが,適応策を考える上で重要な手がかりが多く得られる稿となっている.
 星野美佳先生(兵庫県農政環境部環境管理局温暖化対策課)には,地方自治体が取り組む適応策について,兵庫県での取り組みをご紹介いただいた.温暖化による気候変動のリスクは,農林水産業への影響や自然災害など,地域によって様々であり,地域の実情に応じた適応策が求められる.早くから適応策に関する取り組みを進めてきた兵庫県の取組事例を知ることは,他の地方自治体やコミュニティが適応策を検討する上で有益であろう.
 ご多忙の中,原稿をご執筆いただいた先生方に改めて感謝申し上げるとともに,読者にとって本特集が,地球温暖化と温暖化対策の現状を理解する一助となれば幸いである.