「環境技術」2018年7号 記事情報

掲載年 2018
巻(Vol.) 47
号(No.) 7
361 - 365
記事種類 特集
記事タイトル CO2分離回収・貯留(CCS)技術の現状と展望
著 者 清水淳一
第1著者ヨミ SHIMIZU
第1著者所属 (公財)地球環境産業技術研究機構(RITE)企画調査グループ
要 旨 1.はじめに
 二酸化炭素分離回収・貯留(CCS)は,火力発電所,製鉄所,セメント工場,化学工場等の二酸化炭素(CO2)の大規模排出源から大気中に排出されるCO2を分離回収して,地下深くの安定した地層へ貯留する技術で,地球温暖化の緩和技術の一つである.
 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)1)によると,20世紀半ば以降に観測された気候変動は,人間活動の影響が主な要因である可能性が極めて高いことが示され,気温上昇の変化と人為的起源のCO2の総累積排出量との関係はおおむね線形になると報告されている.つまり,地球温暖化を抑制するためには,大気中のCO2濃度の安定化が必要であり,そのためには人為的起源のCO2排出を削減することが求められる.また2100年に2℃に抑えることを想定した代表濃度経路シナリオ(RCP 2.6シナリオ)では,2050年の温室効果ガス(GHG)排出量は2010年と比べ40〜70%の削減が必要で,2100年に許容されるGHG 排出量は,ほぼゼロまたはゼロ以下となる.このRCP 2.6シナリオでは,2050年までにエネルギー効率が急速に向上するとともに,再生可能エネルギー,原子力発電,CCS またはバイオマスCCS(BECCS)等の低炭素エネルギーの一次エネルギー供給に占める割合が2010年比で3倍から4倍程度まで増加することが特徴である.特に発電部門においては,2050年以降において,BECCS などの拡大により正味の負の排出(カーボンニュートラルであるバイオマスを火力発電所等で利用し,併せてCCS を行うことで実質として大気中のCO2を吸収する)となっている.さらに国際エネルギー機関(IEA)エネルギー技術展望(ETP)20172)での2100年までに世界の気温上昇を2℃以内とするシナリオ(2DS)においても,CCS は地球温暖化の緩和技術の一つとして,再生可能エネルギー,エネルギー効率向上,燃料転換,原子力とともに重要な技術であり,2060年時点でのCCS によるCO2削減量は4.9GtCO2/年,全体削減量30.8GtCO2/年の約16%を担うと期待される.
 このようにCCS は,地球温暖化の緩和技術として欠かすことのできない技術と評価されている.2018年8月現在,世界で操業中の大規模CCSプロジェクトは,グローバルCCS インスティテュート(GCCSI)3)の集計によると18件,建設中は5件,これら23件のCO2回収可能量の合計は約38MtCO2/年である.IEA ETP2017の2DS では,2040年時点のCCS によるCO2削減量は3,800MtCO2/年であり,この2DS を達成するためには,今後,約20年の間に現在の100倍程度までCCS の導入規模を急拡大する必要がある.また,貯留地点の開発には5年から10年以上の長いリードタイムが必要と言われており,このことからもCCSの導入に向けた取り組みを加速しなければならない.
 CCS は地球温暖化の緩和技術の一つとして期待されつつも,広範な導入には至っていない.要因としては,経済性,社会的受容性の問題,法制度や資金等のCCS を実施するための枠組みの構築が十分に整備されていないこと等が考えられる.本稿ではCCS 技術の現状と動向について概説する.
キーワード:CCS,CO2,CO2分離回収,CO2地中貯留
特集タイトル 地球温暖化の現状と緩和・適応策の最新動向
特集のねらい