「環境技術」2019年5号 記事情報

掲載年 2019
巻(Vol.) 48
号(No.) 5
239 - 239
記事種類 特集
記事タイトル 特集のねらい<SDGsの示す社会と実現への課題>
著 者 古武家善成
第1著者ヨミ KOBUKE
第1著者所属 京都先端科学大学
要 旨
特集タイトル SDGsの示す社会と実現への課題
特集のねらい SDGs(持続可能な開発目標)とは,2001年に 策定された国連ミレニアム開発目標の後継として 2015年9月の国連サミットで採択された,「持続 可能な開発のための2030アジェンダ」に記載の 2016年から2030年までの国際目標である.SDGs は17の目標,169のターゲットから構成され,「地 球上の誰一人として取り残さない」ことを掲げて いる.SDGsは途上国のみならず先進国も取り組 むべき,人類共通の普遍的目標である.
このようなSDGs策定の経緯については,外務 省国際協力局地球規模課題総括課長 吉田綾氏の 論文「SDGs達成に向けて日本が果たす役割」に 詳しい.本誌では各年第1号の特集「環境行政展 望」ではもとより,その他の特集でも省庁の方に執筆いただくことは多いが,外務省の方に執筆い ただいた例は恐らくない.本特集で外務省の方に 執筆いただいたことはSDGsに関わる背景の広が りが世界的なものであることを示している.
SDGsに絡む筆者の体験談を一つ.筆者は阪急 電鉄を利用することが多いが,最近,社会貢献を 目的とした「未来のゆめ・まちプロジェクト10周 年記念」と銘打って,車体にSDGsの啓発メッセー ジをラッピングし,17の目標のステッカーを貼っ た「SDGsトレイン」が走っていることに気が付 いた.このように,企業がSDGsの目標を掲げて 社会にメッセージを送ることも珍しくなくなってきている.
これは,地球温暖化をはじめとする地球環境問 題を解決するためには,SDGsが掲げる貧困,飢 餓,教育などの目標の解決が不可欠であり,SDGs の目標が社会の様々なセクションに結びついてい ることを示している. 
筆者が若い頃は行き過ぎた資本主義による公害 問題が国内どこでも起こっていた時代で,「環境」と「経済」は敵対的な関係にあった.それが,環境 問題の解決に経済的手法を用いることを良しとす る風潮が広がったのは,気候変動枠組条約COP3(1997)が京都で開催され,温室効果ガスの排出 量取引制度が導入されてからである.
また筆者の体験を述べて恐縮だが,最近,テレ ビ大阪(キー局テレビ東京)のワールドビジネス サテライト(WBS)をよく視るようなった.WBS は経済専門の報道番組で,報道関係の賞を受賞している良質の番組だが,昔の私なら,経済関係の 番組はまず視なかっただろう.今は環境問題の解決に経済の視点が欠かせないと考えるようになっ たために視ている.経済とSDGsについては,龍谷大学政策学部教授 深尾昌峰氏の「企業にとってのSDGs」をご覧いただきたい.
その他の論文では,国立保健医療科学院国際協力研究部長 三浦宏子氏には「SDGsモニタリング・評価枠組みの背景と今後の方向性」でSDGs の目標達成に重要なモニタリングや評価法につい て執筆いただいた.国立研究開発法人海洋研究開 発機構地球環境部門大気海洋相互作用研究プロ グラム長 米山邦夫氏には「気候変動研究におけ る島嶼国での人材育成・アウトリーチ活動と SDGs」で,大気海洋相互作用研究などの専門の 視点を少しずらし,研究のベースとなる島嶼国に おけるモニタリングのための人材育成について執筆いただいた.
最後に,神戸国際大学経済学部国際文化ビジネ ス・観光学科教授 前田武彦氏には「SDGsにおける持続可能な観光の可能性」で,持続可能な観 光を念頭に特に目標8と1 2の達成に関わる問題と されている観光公害について考察いただいた.
本特集では,知っているようで詳しくは知らな いSDGsの全体像をあらめて示すとともに,環境 から少しウイングを広げて,関係するいくつかの目標の目指す将来について明らかにすることを試みた.