「環境技術」2020年3号 記事情報

掲載年 2020
巻(Vol.) 49
号(No.) 3
119 - 119
記事種類 特集
記事タイトル 特集のねらい <メガソーラーの山林・山間への設置と自然保護>
著 者 河野 仁
第1著者ヨミ KONO
第1著者所属 兵庫県立大学名誉教授
要 旨
特集タイトル メガソーラーの山林・山間への設置と自然保護
特集のねらい メガソーラーの山林等への設置が問題になり,各地で反対運動も起きている.2012年から2017年の6年間に太陽光発電による森林の改変は1,175件,面積は9,330ha に達し,年々増加している(林野庁調査).自然環境保全に関する問題は,森林伐採の自然環境への影響,景観,土砂災害,濁水の発生などである.太陽光発電は,地球温暖化対策として有効な技術であり,建物の屋根に設置する場合には環境問題はない.しかし,自然環境の中に設置されるメガソーラーは規模も格段に大きく,自然環境保全や景観などの観点から設置可能な場所と,設置を制限,あるいは禁止される場所の仕分けが,本来必要である.また,設置を許可する場合には土砂災害を起こさないような条件設定が必要である.しかし,従来の森林法,環境影響評価法等の法規制では大規模太陽光発電を想定しておらず,規制がない.そのことが様々な問題を引き起こしている.本特集の目的は,再生可能エネルギー(以降,再エネと略す)の普及と自然環境保全の両立を目指す立場から,メガソーラーに焦点を当て,規制の現状について整理するとともに,今後のあるべき方向について議論を行う.
 河野は「メガソーラーの山林・山間への設置はなぜ起きているか―政策の問題と解決の方向」について述べる.エネルギーポテンシャルや発電単価においては,太陽光よりは風力が優っているが,太陽光発電に政策力点が置かれたことに問題があると指摘.また,再エネは分散型エネルギーであり,火力,原発などの集中型エネルギーと比べると数が多くなるため自然保護,景観,環境の観点から設置場所,設置条件を法律や条例で設定することが重要だ.利益が地元に還元されるための法的支えが必要と述べる.
 林野庁小林亜希美氏は,「太陽光発電に係る林地開発許可基準の整備について」,太陽光発電施設の林地への設置許可制度に焦点を当てて,林地開発許可制度の歴史,太陽光発電がどのような問題を起こしているか,そして,2019年の「太陽光発電に係る林地開発許可基準の在り方」に関する検討会で防災と景観の観点から出された方針−許可基準の内容について解説する.
 環境省は,大規模な太陽光発電を環境影響評価の対象事業に加えるための政令改正を2019年に行い,さらに,環境影響評価の対象とならない小規模太陽光発電事業に対しては「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」案を作成した.「太陽光発電事業に係る環境影響評価について」環境省森田紗世氏が解説する(この論文は次号以降に掲載予定).
 傘木宏夫氏は「山間地へのメガソーラー開発における自主簡易アセスの取組み」について解説する.傘木氏は,地域住民の中に入り議論を詳細に取材した経験から,地域に再エネを導入する際には,個別具体的に環境影響を評価し,地域社会が許容できる範囲で開発が進められる必要があると述べる.自主簡易アセスメントをすることにより,事業者と住民の意思疎通ができ,地域の環境の保全につながっている事例を紹介している.
 山下英俊氏は「地域に根ざした再生可能エネルギー事業による環境保全の可能性」について提起する.太陽光発電等による土地利用改変には所有者だけでなく,地域社会の合意を必要とする「土地利用の社会化」と「自然環境維持費用負担の社会化」の二つが必要であると指摘する.自然環境維持費用を生み出すには,地域住民が出資した地域事業者が事業を行うのが有効ではあるが,ノウハウや経験,資金調達などの面で難易度が高く,まだ数が少ない.地域再エネ事業を支援・育成するための政策として,長野県の「飯田市再生可能エネルギーの導入による持続可能な地域づくりに関する条例」が参考になると述べる.
 最後に,本特集がメガソーラーと自然保護対立問題解決のための議論のステップになることを望む.