「環境技術」2020年3号 記事情報

掲載年 2020
巻(Vol.) 49
号(No.) 3
138 - 142
記事種類 トピックス
記事タイトル 環境問題としての光害―天文学の観点から―   
著 者 柴田一成、野上大作、前原裕之、野津湧太
第1著者ヨミ SHIBATA
第1著者所属 京都大学大学院
要 旨 1.はじめに
 読者のみなさんはどれくらい天の川を見た経験があるだろうか? 筆者の一人(柴田)は大阪の郊外の住宅地(箕面市)で生まれ育ったので,ふるさとでは天の川を見た記憶がない.現在も,大阪と京都の間にある枚方市という住宅地に住んでいるが,天の川は全く見えない.これはもちろん,住宅の明かりや街灯が明るすぎるからである.これを光害(ひかりがい)という.
 柴田が人生で見た最も美しい天の川は,米国滞在中(1987年ごろ),テキサス・オースティンの自宅からヒューストンまで家族で日帰りドライブしたときの帰りの夜間運転中だった.米国は広大で,人家が全くない場所が延々と続く.対向車が全くない時間も結構長い.したがって,真っ暗な中をヘッドライトの明かりのみで走る.ふと気づくと道路のはるか前方に巨大な天の川がそそり立っている.まるで宇宙空間中を飛んでいるかのようだ.天の川はこんなにも明るいのかと,びっくり仰天した.車を止めてしばらく満天の星空を楽しんだが,星が多すぎて星座がよくわからなかった.光害がないと,こんなにも星がたくさん見えるのか,というのは新鮮な驚きであった.
 図1に宇宙から見た,夜の日本列島を示す.東京,名古屋,京阪神周辺の明るさが際立っている.柴田は大阪近郊,名古屋近郊,東京近郊,大阪近郊とこれらの3大都市圏を転々と移動したので,光害をもろに受けた人生だったと言える.もっとも,3大都市圏は,日本の人口の半分を抱えているので,日本人の2人に1人は被害者と言える.いや,面積的には大したことはなくても,日本中に明るい都市部が点々と存在しており,その住民はやはり光害を受けているから,実は日本人の大半は光害の被害者かもしれない.…
キーワード:光害,環境問題,天体観測,夜空の明るさ,スターリンク衛星
特集タイトル
特集のねらい