「環境技術」2020年5号 記事情報

掲載年 2020
巻(Vol.) 49
号(No.) 5
246 - 250
記事種類 特集
記事タイトル パッシブサンプリングによる水環境中の農薬濃度の中長期的な観測
著 者 矢吹芳教、・野呂和嗣、伴野有彩
第1著者ヨミ YABUKI
第1著者所属 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所 
要 旨 1.はじめに
農薬は,農作物の生産性向上と安定的な供給のための重要な資材であり国内外の農耕地等で多く使用されている.散布された農薬は農作物に付着するだけでなく,一部は田面水や土壌を経て,降雨等により河川や湖沼等の水環境に非意図的に輸送される.このため,農薬は環境水中での検出事例が最も多い化学物質の一つである.
農薬使用の安全性を確保するため,農薬取締法や食品衛生法などの法律が制定され,その使用が管理されている.また,環境基本法において,人への健康影響を考慮した水環境中での農薬濃度基準値が定められている.さらに,農薬取締法における農薬の登録を認める判断基準として,水産動植物の被害防止及び水質汚濁に係る農薬登録基準が定められている.環境中へ排出される農薬の人体あるいは生態影響を管理するため,水環境モニタリングおよび農薬使用実態に基づく水環境中の濃度予測によって環境中濃度を正確に把握する必要がある.
従来,環境水中の化学物質濃度モニタリングはグラブサンプリング(grab sampling: GS)法によって実施されてきた.GS 法はスポットサンプリング(spot sampling)とも称される.GS 法とは,環境水をガラスあるいはポリ容器等に一定量(農薬分析用:約1L など)採取して持ち帰り,実験室でカラムによる濃縮および分析妨害成分の除去を行い,ガスクロマトグラフや液体クロマトグラフなどで定量する.GS 法は,採水時の化学物質の正確な濃度が得られる.しかし,化学物質の一時的・突発的な流入時にサンプリングを実施できなかった場合,それらの濃度変動は捕捉できない.とくに農薬には田植の時期に集中的に施用される除草剤,病害虫の発生に応じて散布する殺虫剤および殺菌剤などのように様々な種類があり,その農薬の種類によって使用される地域・時期は大きく異なること,水環境への農薬の流出は降雨などの気象条件に依存することから,水環境中の農薬濃度は短期間のスパイク状に検出されることが多い.したがって,GS 法で農薬の環境水中の濃度変化を正確に捉えるためには,高頻度サンプリングを長期にわたって継続しなければならず,高コストとなる.・・・・
キーワード:パッシブサンプリング,河川モニタリング,農薬分析,化学物質分析
特集タイトル <水中残留農薬の中長期的リスク評価を見据えて>
特集のねらい