「環境技術」2021年2号 記事情報

掲載年 2021
巻(Vol.) 50
号(No.) 2
70 - 
記事種類 特集
記事タイトル 2020 年船舶燃料油硫黄分規制強化で期待される大気質改善効果
著 者 櫻井達也、速水洋、板橋秀一、嶋寺光、荒木真
第1著者ヨミ SAKURAI
第1著者所属 明星大学
要 旨 1.はじめに
 2016年10月に開催された第70回海洋環境保護委員会(MEPC70)での決定を受け,2020年1月より船舶燃料油中硫黄分濃度の規制上限値がこれまでの3.5%から0.5%に強化された(以下,2020IMO 規制強化).同規制強化は排ガス中のSO2のみならず,硫酸塩の削減も目的としているため,船舶の航行密度が高い地域においてはPM2.5濃度の低減化につながることが期待されている.
 ここ数年,中国大陸での大気汚染対策により,日本国内におけるPM2.5に対する環境基準達成率が改善傾向を示しており(鵜野,他,2017),例えば2018年度におけるPM2.5の環境基準達成率は,一般環境大気測定局(以下,一般局)で93.5%(765/818局)まで改善している.しかしながら,岡山県と香川県ではそれぞれ38.9%(7/18局)および66.7%(8/12局)に留まっており,越境大気汚染の影響を受けやすい九州地方よりも達成率が低い状況にある.両県は,瀬戸内海を挟んだ地理的関係にある.瀬戸内海は中国山地と四国山地に挟まれた内海であり,その沿岸には大規模固定発生源地域が複数存在する.そして海上には多くの船舶が往来する.したがって瀬戸内海の船舶から排出された汚染物質が,例えば海陸風循環流や海上の滞留冷気層に蓄積・変質して高濃度のPM2.5を生成し,沿岸部に影響する可能性は検討に値する.瀬戸内地域が船舶排出物質の影響を強く受けているのであれば,この2020IMO 規制強化により同地域のPM2.5汚染が改善すると予想される.そして,その改善度合いによっては,今後のPM2.5対策に影響する可能性がある.
 以上の背景より,著者らは環境研究総合推進費(JPMEERF20185002)の助成を受け,「2020年船舶燃料油硫黄分規制強化による大気質改善効果の評価(GLIMMS―AQ:study on Global Limit forMarine Fuels Sulphur to better Air Quality)」を実施中である(2018〜2020年度).GLIMMS―AQでは,2020IMO 規制強化前後に,船舶排ガスの影響が強いと予想される瀬戸内地域をモデル地域として長期連続観測を実施し,そのデータ解析と数値シミュレーションを通じて,船舶排出物質が蓄積・変質して瀬戸内海沿岸部のPM2.5に影響する過程を解明することを目的としている.本稿では,GLIMMS―AQ においてこれまでに得られた成果を紹介する.
キーワード:船舶燃料油硫黄分規制,SO2,PM2.5,大気質モデル,排出インベントリ
特集タイトル 船舶を取り巻く排ガス規制の動向と技術開発
特集のねらい